「農民」記事データベース20151207-1193-07

都市農業振興基本法の講演会

日韓両国の都市農業法を比較


基本計画策定に生かせる
韓国の都市農業振興法

 11月4日に都内で、「都市農業振興基本法が目指すもの」と題する講演会が開かれました。

 主催した、都市農業活用支援センター理事長の石原隆氏は、「今年4月に成立した都市農業振興基本法を受けて今後、国や自治体で振興基本計画の策定作業が始まります。今回の講演会は、その策定作業に少しでも役立てられればと企画しました」と開会あいさつしました。

 兵庫県立大学大学院緑環境景観マネージメント研究科の平田富士男教授が「わが国と比較してみる韓国の都市農業振興策―4年前に法制定、農園拡大整備など多彩な展開―」と題して講演しました。

 平田氏は「わが国に最も近い韓国は、歴史文化にも共通のルールがあり、都市の成り立ちや気候風土も似ているところがありますが、あまり情報の交流はありませんでした。都市農業に関して、ほぼ同時に同テーマでの取り組みが法律レベルでなされたのに、何かの『縁』を感じます」と日韓両国の都市農業法の対比を中心に講演しました。

 印象に残ったのは、法律の目的が、日本は「都市農業が有する機能の適切かつ十分な発揮を通じて良好な都市環境の形成に資すること」としているのに対して、韓国は「自然にやさしい都市環境を形成し、都市民の農業への理解を高め、都市と農村が共に発展すること」としていることです。

 都市農業の定義も、日本は「市街地及びその周辺の地域の農業」なのに対して、韓国は「都市部の土地、建築物や様々な生活空間を活用して作物を栽培する行為」としています。韓国ではベランダやバルコニーを活用した住宅活用型や高層ビルの屋上、都市公園や学校の校庭などを活用した園芸活動のようなものも都市農業に含めていることなど、ソウル市内の写真を使った詳しい説明がなされました。

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ソウル市内の市民農園

 さらに、韓国都市農業法15条、16条では、自治体に、必要に応じて買収や公有地との交換、賃貸などにより公営・民営農場を開設し、それを農場として賃貸事業ができるとの規定があります。

 また、具体的な数値目標の策定を義務付けていて、2013年から17年までの目標は、市民農園の面積600ヘクタール〜1500ヘクタール、都市農業への参加者数80万人から200万人としています。

 韓国の条文は、今後の自治体の基本計画策定に生かせると思いました。特に、買い取り申請が出された生産緑地を、自治体が買い取り、市民農園として活用するよう働きかける具体的提案になるのではないでしょうか。

(農民連常任委員 齋藤敏之)

(新聞「農民」2015.12.7付)
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2015年12月

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