「農民」記事データベース20151123-1191-11

肥料メーカーが有機肥料の成分偽装

東北・関東などへ753の銘柄
生産者や業者などに怒り広がる

関連/国際有機農業映画祭


安心して生産・消費できる
万全の対策を早急にぜひ

 JA全農(全国農業協同組合連合会)と提携する肥料メーカー・太平物産(秋田市)が有機肥料の成分を偽装して製造していたという悪質な「事件」が表面化しました。偽装は長期間行われていたもようで、生産者はもとより、流通業者や消費者の間にも衝撃が走っています。

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太平物産のホームページ

 「特栽」「有機」の表示に影響及び

 11月6日、全農は「JA、全農等の名称入りで販売した肥料メーカー秋田県の『太平物産(株)』の製品について表示と異なる内容で製造されていた」として、783銘柄の肥料リスト(後日753に訂正)を公表し、製品の回収を発表。流通先は宮城を除く東北、埼玉、東京、神奈川を除く関東と長野、山梨の11県としています。

 太平物産は「有機質肥料」を売り物にしていたため、これらの肥料を使用した場合、特別栽培農産物や有機農産物に該当しない可能性があります。全農は「『特別栽培農産物』『有機農産物』等として表示せず、慣行栽培農産物として出荷・販売をお願いしたい。出荷済みの農産物についての回収等についても協議したい」としています。

 農民連ふるさとネットワークは、該当する肥料の使用の有無の確認を各県に要請しましたが、複数の方の稲作での使用が確認されました。特別栽培米として生産されていたため、直ちに出荷を止め、出荷済みのものについては、販売の停止や回収について業者の方々と協議しています。

 混乱がさらに拡大する恐れも

 「なんでこんなことに…」。生産農家はもとより、肥料を販売し、生産を指導したJA、販売に関わる業者を含めて困惑と怒りの声が広がっています。

 消費者のあいだでは特別栽培や有機栽培を表示する農産物全体に対する不安が広がり、問題の肥料を使用していない場合でも、「使っていない」との証明が求められ、産地も業者もその対応に追われています。混乱はさらに拡大することも考えられます。

 長年にわたって生産者と消費者が培ってきた特別栽培農産物や有機栽培農産物の信頼を、もうけ本位の一企業によって根底から崩されかねない事態に強い憤りを覚えずにはいられません。

 森山農水大臣は会見で、肥料取締法に基づく農水省の立入検査の際には、当該製品がリストから外されていたことを明らかにしました。会社幹部も偽装製造が長年にわたっていたことを認めています。

 農水省の立入検査の実態も含め、一刻も早い真相の究明と被害者の補償、そして安心してものを作り、消費できるよう万全の対策を取るべきです。

 履歴の記帳など情報の公開を

 農民連は20数年前から栽培履歴の記帳を提唱してきましたが、今こそその経験を生かし、積極的に栽培の情報を公開し、安心していただく取り組みが求められます。
(農民連ふるさとネットワーク事務局長・湯川喜朗)


国際有機農業映画祭

12月20日 東京・武蔵大学

国内外作品6本を上映

 今年の国際有機農業映画祭が12月20日、東京・武蔵大学の江古田キャンパス(練馬区)で開催されます。

 今年は本邦初上映の「種をつぐ人びと(アメリカ)」と「偽善の米(フィリピン)」、「都市を耕す(アメリカ)」の3作品が海外から。故小泉修吉監督の追悼上映で「農薬禍」。さらに「草とり草子」「アラヤシキの住人たち」の2本の計6本を上映します。

 テーマも種子を守るたたかいやフードシステムへの挑戦など多彩な内容です。学習会の材料探しにもぴったりです。

 またブース出展コーナー「有機なブース」には農民連青年部も出展する予定です。特別企画として、「若手百姓の本音トーク」も行われます。国際有機農業映画祭に足を運んでみてはいかがでしょうか。

 日時 12月20日(日)午前9時30分開場〜午後7時40分閉会
 場所 武蔵大学江古田キャンパス1号館
 参加費 前売り1500円、当日2000円(25歳以下は前売り500円、当日1000円)
 問い合わせ 国際有機農業映画祭事務局 fax03(5155)4767 webサイト www.yuki−eiga.com

(新聞「農民」2015.11.23付)
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2015年11月

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