譲歩底無しのTPP
WTOをはるかに上回る
農業つぶし協定
これまで史上最悪の農業つぶし協定といわれてきたWTO(世界貿易機関)と比べると、譲歩底無しのTPPは史上最悪の記録を塗り替えるものであることが浮き彫りになっています。
WTOでは、米のミニマムアクセスを受け入れ、いまも要らない外米を77万トンも輸入させられています。しかし、ウルグアイラウンド交渉では関税撤廃ではなく、農産物全体で平均36%、品目によっては最低15%の関税引き下げにとどまりました。
一方、TPP交渉で日本政府は全農林水産物の81%、重要品目で30%、重要品目以外では98%の関税撤廃を約束しました。関税を残す品目でも輸入枠を新設したり、関税大幅引き下げに踏み出します。
米は、アメリカのゴリ押しに屈して、アメリカ米7万トン、オーストラリア産米8400トンのTPP輸入枠を新設。さらに、ミニマムアクセス米のうち6万トンを中粒米枠としてアメリカにサービスし、米の調整品・加工品の一部は関税を撤廃します。
小麦でも米・オーストラリア・カナダ向けに25・3万トンのTPP輸入枠を新設。事実上の関税であり、国産小麦の価格補てん財源に充てられている「輸入差益」を45%削減します。
牛肉の関税は38・5%から9%に。豚肉の関税は加工用以外は10年で関税撤廃、加工肉の差額関税は1キロ482円から50円に。内外価格差を考えれば、牛肉・豚肉ともに関税はゼロに等しい水準です。
乳製品ではナチュラルチーズ、ホエイ(乳清)の関税は撤廃、バターと脱脂粉乳には低関税のTPP輸入枠が新設されます。砂糖・でんぷんにも特別輸入枠。
重要5品目以外の農林水産物では、野菜、果実・果汁、鶏肉・鶏卵、ワインや林産物、水産物など、軒並み関税が撤廃されます。“日本農業皆殺し”作戦の様相です。
関税撤廃という開放水準の深さという点でも、野菜を含め、打撃が全分野に及ぶという点でも、農業つぶしの度合いはWTOをはるかに上回ります。史上最悪のTPP協定に「事後対策」などありえません。最善の対策はTPP協定をつぶすことです。
(新聞「農民」2015.11.23付)
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