味がよい
調理しやすい
どんな料理にも合う
江戸東京野菜守って“町おこし”
練馬ダイコン・谷中ショウガ・金町コカブ…
東京小金井
在来種守り伝えていきたい
地場の野菜を料理に使って
江戸東京野菜とは江戸期からの東京の野菜文化を継承している、昭和中期(40年頃)までのいわゆる固定種、または在来の栽培法等に由来する野菜のことです。練馬ダイコンや谷中ショウガ(台東区)など42品目が登録されています。
小金井市は2004年からNPO法人ミュゼダグリ(現在はNPO法人江戸東京野菜コンシェルジュ協会に改組)と連携して、公民館講座で、江戸東京野菜の栽培を始めるなど、固定種の野菜を使ったまちおこしを進めてきました。
07年からは市内の飲食店で江戸東京野菜の料理を提供することで、農商連携のまちおこしがスタート。それに合わせ、06年には都立小金井公園内にある江戸東京たてもの園の内部に、江戸東京野菜のショーケースとなる「かわいい畑」を設置し、江戸東京野菜の普及を行っています。
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「かわいい畑」とNPOのみなさん(左から清水さん、納所さん、佐々木さん) |
都市農地減少何とか阻止を
「50歳代のころは、妻の実家でトラクターに乗って野菜作りをしていた」という納所(のうしょ)二郎さん=71=(コンシェルジュ協会理事長)は、お花見会場で野菜の種を売っていたミュゼダグリと出合い、活動へと加わりました。
納所さんは「都市の農地の減少を、何とか食い止めたいと思っていた。まちおこしだけでなく、固定種を守り伝えていくことも非常に大切。そのためにも江戸東京野菜の存在を、もっと多くの人に知ってもらわないといけない」と語ります。
物語のある野菜残していきたい
かつて報道関係に勤めていたコンシェルジュ協会の佐々木昭理事は、納所さんに誘われて活動に加わりました。「地域の名称がつき、物語のある野菜がなくなってしまい、一代限りのF1品種ばかりにならないよう、復活・普及のネットワークづくりなら手伝えるかなと協力し始めました」ときっかけを語ります。今では近くに借りた菜園で、これまで15品目ほどの江戸東京野菜を栽培。その経験を生かして今年の「かわいい畑」は栽培の種類が大きく増えました。
日常的に世話をしているのは西東京市の清水博史さんです。交通事故のリハビリで畑の世話を始めた清水さん。たてもの園を訪れた人に「なぜ野菜を植えているの」「どこに行けば食べられるの」などとよく聞かれます。「来た人に喜んでもらえるとうれしいですし、江戸時代の人も庭で野菜を作っていたことなど、当時の様子が少しでも伝われば」と話しています。
ガッチリ連携 農・商
この野菜たちは評判も上々です
JR中央線の武蔵小金井駅から徒歩7分の所にある新西洋料理店「ヴァン・ド・リュ」。店主の永瀬義祐さん(63)はシェフ歴48年目。店では小金井の野菜を使った料理を提供しています。07年から江戸東京野菜を使い始めました。「最初は農家も慣れていなくてとんでもない野菜が来たこともあった」と振り返ります。「1988年からここで店を出しているが、もともと地場の野菜を使いたいと思っていた」ところに小金井市の取り組みが始まりました。
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「ヴァン・ド・リュ」店主の永瀬義祐さん |
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小金井の野菜をたっぷり使ったランチ |
江戸東京野菜について永瀬さんは「味が濃いので調理しやすく、どんな料理にも合う。お客さんの評判も上々です」と語ります。寺島ナスを使ったムースなどにも挑戦しています。「これからの時期は、亀戸ダイコンや金町コカブがおすすめです。葉が大きいので、葉までおいしく食べられます」と永瀬さん。おいしい小金井の野菜を食べられるお店です。
(新聞「農民」2015.10.26付)
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