土壌は環境保全の基盤
日本農学会 国際土壌年でシンポ
日本農学会は10月3日、東京都文京区の東京大学弥生講堂で、シンポジウム「国際土壌年2015と農学研究―社会と命と環境をつなぐ―」を開きました。
日本農学会会長の三輪睿太郎・東京農業大学総合研究所教授が「広い分野の専門学会から、食料生産や生物活動、環境保全の基盤である土壌についての知見を聞き、国際土壌年の意義を考える契機にしたい」と開会あいさつ。
首都大学東京の小崎隆教授が「100億人時代における土壌の役割」について講演。各地の土壌劣化の例をあげ、カザフスタン北部など温帯草原では、「近代大規模機械化農業によって土壌有機物が消耗し、放出される二酸化炭素(CO2)によって温暖化の促進が危惧される」と指摘しました。
さらに、熱帯の途上国では、焼き畑耕作によって土壌の養分が失われ、熱帯林の減少を引き起こしていると非難されていることが語られました。
秋田県立大学の佐藤了名誉教授は「食生活の変化と土地利用方式の革新」のテーマで発言。「日本の食生活の洋風化は、農産物輸入とりわけ飼料の輸入をてこに実現され、国内では、耕種と畜産の物質循環に基づかない農産物の供給構造が形成されてきた」と述べ、それに伴い作付け体系や作業体系など土壌への働きかけも変化してきた経緯を説明しました。
そのほか、「畜産と土壌を結ぶ物質循環の重要性」「土壌環境が支える草本植物の種多様性」などのテーマで報告がありました。
(新聞「農民」2015.10.26付)
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