「農民」記事データベース20151012-1185-08

私と土づくり
国際土壌年にあたって

和歌山県農民連 高橋範行=32=(紀の川市)


生きものに土を耕してもらう
住みやすい環境つくる田んぼ

 「生き物に土を耕してもらう」というスタンスで、無農薬で1町(1ヘクタール)の米とハウス野菜を作っています。土中の生物のバランスに気を付けて、微生物が、団粒構造の良い土をつくれるような環境にすることを大切にしています。

 基本となる肥料は収穫した稲わらです。わらは、刈り取りが終わったらすぐに田んぼにすき込み、一部はハウスにも入れています。トマトの木も収穫が終わったらカットして緑肥にします。

 微生物のすみかになるように自家製のもみ殻くん炭を入れ、1反(1アール)あたり40〜50キロの米ぬかを入れて乳酸菌の力で微生物を活性化させています。

 おかげで自分の田んぼは雑草が1本も生えていません。水の濁りが周りの田んぼより1カ月は長持ちしているので、草が生えてこないのです。カブトエビなどの田んぼの中に住む生き物が、周りに比べて特に多く、その生き物たちが濁りを保ってくれています。

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カブトエビを手にのせる高橋さん

 苗自体も大きめに丈夫に育て、間隔を広めに植えています。バランスの取れた土を作り丈夫な稲にすることで、病気なども起きにくくなっていまます。

 ハウスの方でも微生物と栄養のバランスに気を使っています。田んぼもハウスも、収穫が終わるたびに土壌分析を行うとともに、作物の様子を観察して肥料の量を調整しています。特に肥料を過剰に入れないように注意をしています。微生物のおかげで、トマトの連作障害もほとんど起こさずに栽培できています。

 自分の住む紀の川市は決して稲作の盛んな土地ではなく、米価下落の影響もあります。その中でも、自分は田んぼを作り続けていかなければならないと思っています。

 なぜか。それは地域の環境を守るためです。コンクリートやアスファルトの地面が増えるなか、田んぼは貴重な生き物のすみかになります。田んぼの上を渡る涼しい風など、人間が快適に暮らす環境を守るにも、田んぼは欠かせません。また米は日本人の主食ですし、循環型農業にもピッタリです。人が住める環境の維持に、田んぼの果たす役割は大きいと感じています。

 しかしいろいろ工夫し、良い米を作っても、暮らしていくので精いっぱいの現状があります。売り先の確保も悩みです。今年はまわりの作付けが減り、このままいけば確実に耕作放棄地が増えていきます。地域を守るためにも、何としても“米つくって飯くえる”ようにしなければいけないと強く思います。

(新聞「農民」2015.10.12付)
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2015年10月

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