こんな超低米価ではいくらがんばってももう米づくりはできない!
お茶わん1杯35円が日本の米守る昨年、一昨年と続いた米価の暴落。“こんな価格が続けば来年はもう米づくりはできない”と悲痛な声が広がっています。今年の米価はいったいどうなるのか、なぜ下がり続けるのか。米問題を様々な角度から考えてみます。
お茶わん1杯が缶コーヒー1/5私たちが日々口にするご飯。お茶わん一杯はいくらでしょうか? 今、スーパーなどの米の販売価格は5キロ1500円以下が主流になっています。このお米をお茶わん一杯のご飯に換算するとたったの20円。缶コーヒー1本や板チョコ1枚の5分の1程度です。
流通業者の利益や経費を差し引くと農家の手取りは1俵(60キロ)9000円程度にすぎず、生産費1万6000円の6割にもなりません。これではいくら農家ががんばっても米を作り続けるのは不可能です。 消費者にとってもお米が安いと喜んでばかりはいられません。国産米の作り手がいなくなれば、輸入米に頼ることになりかねないからです。 私たちの試算では、消費者がお茶わん一杯30円のご飯を食べれば農家は生産費を賄うことができます。お茶わん一杯35円のご飯を食べていただければ、農家の後継者が育ちます。
もっと下げろと政府や大手量販ところが、安倍首相が議長を務める産業競争力会議や農水省などは「米の価格を4割下げろ」などとさらに米価を引き下げる議論をしています。大手量販店などは“農家のコストは無視。自分だけもうかればよい”とばかりに価格破壊に狂奔していますが、こうした商法が続けば、農家の姿も、農村も失われてしまうでしょう。炊き立てのご飯を食べながら、「お茶わん一杯30円、35円が日本の米を守り、国産米を食べ続られることにつながる」と、ご飯の味とその値うちをぜひかみしめたいものです。
まっとうな価格で販売したい天地米店店主 小澤量(りょう)さん=東京都府中市いま米価暴落に危機感東京都府中市の天地米店店主、小澤量さん(55)に話を伺いました。天地米店ではほとんどの米を生産者や生産組織から直接仕入れています。この2年の米価暴落の影響は「はっきりとはしないがあると思う」といいます。
小澤さんは来店した人に「このお米は1膳いくらになると思いますか」と問いかけています。 「大体のお客さんは考えたことがないですね。50円位と思っている人が多いようです。ですので実際のお米の値段から計算してもらうと、たいてい安くてびっくりされます。菓子パンや缶ジュースなどと比べたり、日々の携帯電話の料金と比べたりして、『おかしな経済行動をしていませんか』とやんわり問いかけています」 小澤さんは飲食店など業務用の販売でも同じように問いかけています。「ごはん1杯のコストはいくらなのか。そのなかでできるだけお客さんに満足してもらい、リピーターになってもらえるように、飲食店ともプロデュースができたら」と考えています。 「ただ単にコストを下げようという考え方ではなく、業界全体がお茶わん1杯当たりの価格で考えるようになればまっとうな価格で販売できるようになると思います。米は価格が安くなっても、その分多く売れるものではありません。業界全体が適正な価格を維持する方法を考えないといけない」と、小澤さんは今の低米価に危機感を持っています。
(新聞「農民」2015.9.21付)
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[2015年9月]
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