「農民」記事データベース20150907-1180-04

「農協改革」関連法案の
参議院採決に抗議する

2015年8月28日
農民運動全国連合会会長・白石淳一


 8月28日、参議院本会議において「農協改革」関連法案が自民党、公明党、維新の党などの賛成多数で可決された。法案には、民主党、日本共産党などが反対した。私たちは、この採決に強く抗議する。

 政府は、「農協改革」関連法案の目的を「農業所得向上」や「農協の自主性発揮」としているが、JA全中の一般社団法人化や地域農協に対する監査権限の廃止、準組合員の見直しなどが、これらの目的達成に役立つどころか、むしろ逆行するものであることが明らかになった。現に、衆・参両院の参考人質疑や地方公聴会において、与党推薦の参考人も含めて誰一人関連法案に賛成する人はいなかった。

 「農業所得向上」を本気で追求するためには、自民党農政の転換と安倍政権が前のめりで進めているTPP交渉の中止こそが必要である。米価暴落を放置したままで、農協系統の組織いじりによって「農業所得向上」が実現できるなどというのは、戦争法案を「平和維持法案」と強弁するのと同様の悪質な欺まん以外のなにものでもない。

 政府がねらう「農協改革」とは、自主・自立・民主的な運営を原則とする農業協同組合を、グローバル企業をはじめとした大資本との市場競争に投げ入れ、農協の総合事業を弱体化させ、家族農業経営をいっそう窮地に追い込むものである。同時に、財界・大企業による企業的農業経営を促進させ、アメリカの財界要求に従って農協の信用・共済事業を多国籍企業に明け渡そうとすることは明白である。また、公選制を廃止して農業委員会の機能を弱体化させる農業委員会「改革」や農業生産法人の要件緩和は、戦後の農地制度の根幹を破壊し、外資も含めた一般企業の農地所有に道を開くものにほかならない。

 安倍政権のもとで官邸独裁政治が進んでいるが、「農協改革」はTPPに強く反対してきた農協を「抵抗勢力」「岩盤規制」の象徴として描き出し、その解体をねらうものでもある。

 同時に、国会審議を通じて、食料・農業ばかりでなく地域のインフラを含め、地域全体を支えている農協の役割がいっそう明らかになったことが今日の到達点である。日本の農業を守り、食料自給率を向上させるうえで、地域農業と家族農業経営、地域のくらしを支える農協を発展させることこそが重要である。

 「農協改革」関連法は成立したが、改革の本質やねらいは今後いっそう明らかになる。地域でのたたかいはこれからである。

 私たちはTPP反対をはじめ、家族農業経営を守り、地域と人々の暮らしを守る共同の世論と運動を全国各地で発展させるために奮闘する。

(新聞「農民」2015.9.7付)
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2015年9月

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