知りたいTPP
TPA
“為替条項”って?
アメリカでは憲法上、TPPなどの貿易交渉権限は政府ではなく議会が握っており、TPP妥結のためには、貿易権限促進法(TPA)を成立させ、政府が議会から権限を譲ってもらうことが不可欠です。TPAなしでは、アメリカ議会が協定の「修正」や交渉やり直しを求めることができるので、これをおさえこむためです。
議会は政府に無条件に権限を譲るわけではなく、さまざまな条件をつけます。その条件の一つが「為替条項」です。
アメリカの自動車産業界などは、ドル高(円安)がアメリカの輸出を抑制し、輸入を増やしていると称して、これに対する報復措置をとることを求めています。
アメリカ議会は、日本などを「為替操作国」と一方的に断定し、為替操作があった場合には報復的に関税引き上げを行うことができるという規定をTPPなどアメリカが結ぶ自由貿易協定にもりこむことを要求しています。政府が為替条項抜きの協定に合意した場合は、政府から権限を奪い取るか、交渉やり直しを命ずることになります。
TPAは6月に成立しましたが、激しい駆け引きの結果、積み残しがいくつかあります。その一つが「為替条項」で、報復措置を規定した修正案は宙に浮いたままになっています。民主・共和両党の議員の過半数がTPPに為替条項を含めることを要求しており、夏休み明けの米議会で蒸し返されることは必至です。
もちろん、アメリカが他国を「為替操作国」と一方的に断定し、報復措置をとるなどというのは最悪の主権侵害です。日本政府も為替条項に反対しています。しかし、アメリカ政府はハワイ閣僚会合でも「為替操作監視協議会」の設置を打診するなど、火種は残ったままです。まだまだ油断はできません。
(新聞「農民」2015.8.31付)
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