シイタケ原木の放射能汚染賠償額
長野の農家
東電と13年分も合意
「東電から、2013年分の支払明細書が来たので、内容を見て合意しようと思う」との連絡が6月22日、Aさんから長野県農民連の事務所に入ってきました。今回で3年目の請求でした。
Aさんは、2011年4月に種菌業者を通じて福島からの原木を購入し、シイタケ栽培を営んでいました。出荷が始まる直前に「放射能汚染」が判明し、出荷できなくなり、その年の暮れに、長野県農民連に連絡が入り、年越しの資金繰りをはじめ「被害請求」の手続きを始めました。
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シイタケ原木 |
経費増分も損害額に
2011年は、出荷停止による減収分すべてを認めさせました。2年目は、東電側は、一般的な「所得率」を持ち出して損害額を少なく回答してきました。これを不服として、ADR(原子力損害賠償紛争解決センター)に申し立て、結果的には、過去の販売実績や経費率を基準として、植菌原木8000本予定のところ4000本にとどまったため、4000本から得られたであろう収入と、4000本の植菌のための自家労賃など経費の増加分も損害として認めさせることができました。
2013年購入分は、導入以後の売り上げと経費について翌年分と案分して請求しました。回答は請求の83%ぐらいでしたが、Aさんは「東電は、被害がなかった場合の予想所得と実際の所得の差額で計算しているようだ」と言い、請求した金額と違うものの本人も納得した金額になりました。
個人の実績に基づき
その理由は、第一に、東電が「原発事故がなければ得られたであろう」金額を認めたことです。これは昨年に続いて「福島のシイタケ原木の汚染責任」を認めさせ、これを前提に栽培計画と設備状況から損害額を認めさせたことになります。
第二に、今回一般的な所得率でなく、Aさん個人の実績に基づき、売上単価や所得率も認めさせたこと。売り上げはもちろん、必要経費についても細かく記入して、確定申告を行っていたからです。
今後、被害が続く限り「損害賠償請求」は続きます。これからも、確定申告の手びきに基づく自主計算は、税金の申告だけでなく、このような「損害賠償請求」にも大いに役立つと思います。
(長野県農民連 菊池敏郎)
(新聞「農民」2015.8.24付)
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