「農民」記事データベース20150824-1178-12

漁業・漁民のページ

外房沖の漁場・家族経営守ろう

共同してがんばる
沿岸小型組合(千葉)船団長のみなさん

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 全国の漁業経営体の78%は20トン以下の船を持つ沿岸漁業経営体です。この全国の沿岸漁民を横につなぎ、小規模漁業・家族漁業の漁場と資源、経営を守ろうと、7月18日に全国初となる全国沿岸漁民連絡協議会準備会が発足しました。その中心的役割を担ったのが、千葉県沿岸小型漁船漁業協同組合(以下、沿岸小型組合)。この組合の船団長会議が7月27日に勝浦市で開かれ、準備会事務局の山本浩一さん(21世紀の水産を考える会)、笹渡義夫さん(農民連副会長)らも参加しました。

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沿岸小型組合のみなさん(勝浦市)

 違反操業する大型まき網船から守る

 この漁協は千葉県外房地方にある16地区の船団がそれぞれの所属漁協の違いをのり越えて全県的に作られた広域組合。釣り漁業を中心とする10トン未満の小規模沿岸小型漁船が構成員です。

 結成は1966年。当時、銚子沖でサバを漁獲していた大臣許可漁業の大中まき網漁業船団の傍若無人な操業から、外房沖の小型船漁場の資源を守ろうと設立されました。今は354隻が所属しますが、当時の加入隻数は800隻でした。

 沿岸小型の漁船が団結して、大臣許可の大型船船主と何度も交渉、結成翌年には大中型まき網漁業を外房沖漁場に入れさせない協定を取り交わし、さらに78年には同じく大臣許可の沖合底引き網船団とも協定を締結、外房沖の小型船漁場を守ってきました。

 「違反操業する大型まき網船を海上で小型船全船で取り囲んだこともありました。沿岸小型組合の方針は『子孫に残そう豊かな海を』『魚資源の永続的利用と資源管理』です。今の生活はもちろん大事ですが、次の時代のことも考えて皆と協議、共同行動するように心がけています」と鈴木正男組合長は強調します。

 徹底して議論して決め全船団が尊重

 組合運営は16の地区船団から選ばれた船団長と船団員でつくる船団長会議で協議します。この組合の方針は徹底した民主的運営です。

 沿岸小型組合内の規約を決める基本は、少数意見も尊重し、多数決だけで絶対に規約は決めない点です。すべての船団が納得し、16船団が賛成するまで徹底して議論して決まった規約は全船団で守ります。

 「キンメダイ、イカ、サバ、カサゴ、底魚と様々な操業規約をつくり、資源を大切にしながら家族経営を守っています。外房は日蓮上人の生誕地。われわれは小さいときから生き物を大切にすることを教わってきた」と胸を張るのは、元吉政勝副組合長です。

 恵まれた豊かな海消費者と手つなぎ

 近年、季節に応じて回遊してくるカツオ、マグロ、スルメイカなどが少なくなり、燃油や漁業資材の高騰、魚価安によって全国の沿岸漁家経営は苦しくなってきています。今回の全国組織結成も和歌山県のカツオ漁師仲間との協議が発端です。

 「私たちは全国の漁民の仲間、消費者の皆さんと手をつなぎ、豊かな海に恵まれた日本の沿岸漁業を守り続けたい」と船団長会議の皆さんは日焼けした顔で熱く語っていました。


長野・飯田市 平澤益実

(新聞「農民」2015.8.24付)
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2015年8月

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