二度も“試験に不合格”が明確に
『先物』にはきっぱり不認可を
米の先物取引
試験上場再延長を申請
米の先物取引の試験上場の期間(2年)が8月7日で終了します。大阪の堂島先物取引所(堂島商取)は2年間の再延長を申請しました。4年前に試験上場の認可を受けながらまともな実績を残せず、2年前に取引の拡大を条件に試験上場延長の認可を受けていました。しかし、その後も取引は広がっていません。すでに二度も「試験に不合格」が明確になったいま、試験上場の延長はきっぱり「不認可」とすべきです。
不安定な米価を一層混乱させる
先物取引所はこの間、米卸団体や米業者、生産者などを巻き込んで、取引の拡大に躍起となって来ました。しかし、過去4年間の取引実績は停滞したままです。東京穀物商品取引所(東穀取)は当初目標とした1日の出来高5000枚に対して1割以下に終始し、試験期間中に解散する始末です。東穀取の事業は堂島商取が「東京コメ」として引き継ぎましたが、取引の停滞は変わっていません。
たしかにこの間、米の需給と価格があまりにも大きく激変し、先行きが不透明なため、一部の米業者から「リスクヘッジに活用できないか」との声や、最近、「JA全農も活用を検討」などの報道もあります。しかし、先物取引はあくまでも投機家のもうけのための投機の場であり、ただでさえ不安定な米価をいっそう混乱に導くことになります。現状は取引の停滞で市場に影響を与えるほどにはなっていないことは幸いというべきでしょう。
米業者も生産者も真に求めているのは、リスクヘッジなど必要としない、米の需給と価格の安定であり、安心して生産や事業に専念できることではないでしょうか。
先物に価格形成期待する農水省
ところが先物取引に理解を示す農水省は、毎月公表する米の市場価格の動向で、農水省が調査する相対取引価格に次いで「先物取引の価格動向」を取り上げています。卸団体などの業者間取引や年間300万俵の取引実績があるという民間の仲介会社「日本農産情報」の相場に優先して掲載しているのです。ここには先物取引を何とか育てたいとする農水省の思いがにじみ出ています。
米価安定の手立てをなんらとることなく、先物取引に市場価格の形成をゆだねるなど論外です。
農水省がいまやるべきことは、「米の需給と価格の安定に責任を果たすこと」であり、先物取引の試験上場の延長などあってはならないことです。
(農民連参与 横山昭三)
(注)堂島商取は取引単位や標準品の違いなどから「東京コメ」「大阪コメ」の二本立てで取引しています。
(新聞「農民」2015.8.10付)
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