「農民」記事データベース20150810-1177-01

日本の農業と主権をアメリカに売り渡す
TPP交渉は中止せよ

2015年8月1日
農民運動全国連合会会長・白石淳一

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 1、7月28日から31日までハワイで開かれていたTPP閣僚会合は、「大筋合意」というフィクションをでっちあげることに失敗し、次回会合の予定を決めることもできないままで終わった。TPA(貿易権限促進)法成立を受けて、米日政府が「最後の」場として満を持して臨んだ閣僚会合が決裂した原因は、日本をはじめ参加各国の国民の運動の成果であるとともに、TPPをめぐる矛盾がますます明瞭になっていることにある。

 TPPは単なる貿易協定ではなく、アメリカのルールをアジア・太平洋地域に押しつけ、参加国の国家主権を侵害し、国民の生活を悪化させる。TPPは、知的財産権の強化により貧者から医薬品を奪い、ISD(投資家対国家紛争解決)条項により参加国の環境・健康などの公共政策を破壊する。TPPはまた、競争・国有企業・政府調達条項により、各国の発展段階に則した経済政策の実行を著しく阻害する。

 2、この矛盾は「秘密交渉」のベールがはがされるにつれて、今後ますます深まりこそすれ、解消されることはない。矛盾の激化は交渉参加国政府にも及んでいる。ハワイ閣僚会合前から、カナダやマレーシア、ニュージーランドが「乱」を起こし、日米政府はこれらの国を交渉から排除すると脅してきた。カナダのメディアは「TPPは脅迫の段階に入った」と批判したが、排除をちらつかせた「脅迫」をもってしても政治決着ができなかったところにハワイ閣僚会合の深刻な特徴がある。私たちはハワイを文字通り「最後の閣僚会合」にすること、つまりTPP交渉そのものをきっぱり中止することを要求する。

 3、ハワイ閣僚会合での安倍政権の交渉姿勢は史上最悪であり、国会決議を全く無視して日本の農業をアメリカに売り渡すことになんのためらいもないものであった。アメリカ米の輸入枠の拡大、牛肉・豚肉の関税大幅引き下げ、乳製品の輸入枠拡大に加えて小麦・砂糖の輸入拡大措置の検討や鶏肉関税引き下げなど、農産物市場開放のバーゲンセールといわざるをえない。「重要農産物」を守って一歩も譲ろうとしなかったカナダ政府や、「憲法と主権、中小企業・マレー人優遇など国の中核となる政策は変更しない。今回の交渉ではいかなる合意にも署名しない」として交渉に臨んだマレーシア政府と比べれば、安倍政権の従属・売国ぶりは明らかである。日本の農業と経済主権をアメリカに売り渡すTPP推進と、日本の若者の命をアメリカに差し出す戦争法案は根が一つであり、ここにこの政権の史上最悪ぶりがあらわれている。

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ハワイで行われた「TPP反対ビーチ・アクション」。右から2人目が岡崎衆史・農民連国際部副部長。「TPPは農民を殺す」というプラカードを掲げています=7月29日

 4、私たちはTPP閣僚会合が事実上決裂に終わったことを歓迎するとともに、無駄で有害きわまりない交渉を中止すること、TPP交渉の情報公開を要求する。あわせて、日米協議で安倍政権が示した農産物の譲歩提案をすべて撤回するとともに、その国会決議違反の全容を国民に公開し、謝罪することを要求する。

 TPP推進勢力のもくろみは大きく崩れた。安倍政権は8月末にも閣僚会合を開き、「もう一度、会合が開かれればすべてが決着するだろう」としているが、私たちは国内の広範な諸階層との共同と国際的連帯をますます強め、TPPの息の根を止める運動を広げる。


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新聞「農民」編集部

(新聞「農民」2015.8.10付)
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