生協出荷の放射能検査費用
14年分も「全額支払い」勝ち取る
長野・北信産直センター
東電は昨年6月、一方的に賠償基準を見直し、損害賠償よりも東電の経営を優先する態度を表明。これ以降、風評被害のほとんどの賠償請求に対して「原則賠償の対象外」とし、これまで賠償に応じてきた請求内容も賠償を拒否するという態度に終始しています。そういうなかで、長野県農民連の賠償請求運動では、生協出荷のための分析用サンプルの品物代金と送料を「全額支払う」という成果が生まれています。その取り組みを紹介します。
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東電福島第一原発事故以降、ながの北信産直センターが農産物を出荷している生協では、放射能検査をしています。そのために生協から農産物のサンプルの提供を依頼されています。産直センターは、そのサンプル代金と生協への送料などを毎年1年分ずつ、東電に損害賠償請求をしています。県内では、飯伊(はんい)農民組合も同様に請求をしています。
今年3月、4回目となる請求(2014年2月から15年1月分)をしました。東電からは例年のごとく受け付けたとの連絡が入り、過去3回分と同様にすぐにでも入金がされると思っていました。
ところが、4月に東電から「山菜・きのこ培地は出荷制限の対象になっているので、その分のみ支払いをする」との回答がきました。その後、電話の都度9回にわたり「全額支払い」の請求をしましたが、平行線のままでした。5月には、「請求が来て2カ月以上経過しているので、きのこ培地などのみの支払いをするか、いったんすべてを取り下げて再度請求をするのか」という選択を迫られました。
県連に相談したところ、同じ期間で飯伊農民組合からの請求に対して、出荷制限の対象となっていない、モロッコインゲン、梨(幸水)、市田柿などのサンプル代金も含めて請求金額全額が支払われていることがわかりました。そこで県連から「同じ生協に出荷しているのに、飯伊は出して、ながの北信には出さないとは、どういうことだ」と問い合わせたところ、6月12日に、東電から「今回は全額支払いします」との連絡が入りました。その理由は「出荷先から要請されたことが明らか」ということです。
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検査費用の全額賠償を喜ぶ生産者と事務局のみなさん |
しかしそのうえで、東電は「今後は、野菜・果物については被害がないという処理をします」と言っています。しかしそれは、東電が一方的に主張していることで到底納得できるものではありません。現に、生協は消費者の不安を解消するために、今年度も検査体のサンプル提供の要請をしています。私たちもこの要請にはしっかり応えようと思います。この原因をつくったのは誰なのでしょうか?
今後も、今まで通り県連や県内の産直組織、多くのみなさんと連携して請求をしていきます。
(ながの北信産直センター 小野沢智恵子)
(新聞「農民」2015.8.3付)
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