村の人々からも注目
未来支える生産者
Uターン就農11年
大島太郎さん(41)
長野・上伊那・中川村
後継者育成に力入れ
放棄地を引き受けて
長野県上伊那郡中川村にUターンで就農し地域を支えている農家がいます。大島太郎さん(41)です。
有機栽培野菜と平飼いニワトリ
県外の生産法人などで研修をしたのち、11年前に中川村で就農しました。当初は80アールほどの耕作面積でしたが、現在は約5ヘクタールの畑と33棟のハウスで約100種類の野菜を有機栽培しています。また今年から400羽のニワトリを平飼いで飼育しています。
大学時代は生ごみの堆肥化などを研究していた大島さん。農業の現場で働きたいという思いが強くなり、卒業後研修に出ました。「できれば農薬を使わないで農業をやりたい。野菜ならばなんとかできるのではないかという見込みが在学中にありました」と大島さん。
父親の同級生でもあった中川農民組合事務局長の市瀬拓朗さん(74)に協力していただき、80アールの農地を借りてスタートしました。その後、周囲の農家などから耕作できなくなった土地を引き受け、現在の面積まで増え、研修生を含め10人の従業員とともに生産しています。
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花ざかりのミニトマトと大島さん |
苦労もつきもの無農薬の栽培
「出荷先は研修中のつながりをもとに、口コミで評判が広がって3分の2が直売です。個人への野菜ボックスは3種類用意しています。また、東京や大阪、京都などの有機農産物を扱う店や、料理店にも出荷しています。全部で約100軒くらいのお客さんがいます」と話します。
無農薬で栽培しているために苦労もつきものです。「植えた作物が全滅した経験は何度もありました」と大島さん。「基本は堆肥を使っていい土にすることを心掛けています。堆肥もできるだけ地元で手に入るものを使っていきたい。まだまだ有機での栽培方法が確立していないので、研究してブラッシュアップしていきたいです」とこだわりを持って耕作しています。
村農業委員や県農民連
執行委員を務めて
研修生3人が巣立っている
農民組合に加入したのは市瀬さんに誘われたのがきっかけです。「会員が中川村の農業で中心となってがんばっている人たちで、つながりができたのがすごくありがたかったです」と話します。
現在は中川村の農業委員と長野県農民連の執行委員を務めています。
今後について大島さんは、「後継者不足と耕作放棄地の解消を何とかしたいと思っています。自分のところで研修を受け入れているのもその一環です。中川村で一つの農民組合という比較的規模の小さな組織なので、小回りの利いたおもしろい動きができるのでは」と話しています。すでに3人の研修生が巣立っており、大島農園は新しい形の後継者(組織)として村の人からも、県農民連からも注目されています。
(新聞「農民」2015.7.27付)
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