「農民」記事データベース20150727-1175-06

戦争法案ここが問題

関連/「違憲」が多数

 戦争法案が衆議院で自民、公明両党の賛成多数で強行可決され、舞台は参議院に移ります。改めて、同法案の問題点をみてみます。


 後方支援は戦闘行為そのもの

 戦争法案の問題点は、国会論戦を通じて、ますます浮き彫りになっています。

 戦争法案は、地理的な制約を外し、「戦闘地域」まで踏み込んで、米軍への補給・輸送などの支援を行うことが大きな柱の一つです。

 この間、安倍首相は、「これらの活動は武力行使とは異なる『後方支援』であり、憲法で禁じる『海外での武力行使』には当たらない」と説明してきましたが、「後方支援」という国際法上の概念はなく、武力行使と一体不可分の兵たん活動であることが明らかになりました。

 治安支援部隊で多数の戦死者

 戦乱が続いている地域での「治安維持活動」は武力行使に転化する危険性をもっています。

 PKO(国連平和維持活動)法の改定によって、「非国連統括型活動」という、PKOとは無縁の活動を新たに持ち込み、形式上「停戦合意」がされていても、戦乱が続いているところに、自衛隊を派兵して治安活動をさせることになり、武器の使用も「自己保存」だけでなく「任務遂行」のためのものに拡大します。

 安倍首相は、2001年から14年までアフガニスタンに展開した国際治安支援部隊(ISAF)のような活動への参加を否定しませんでした。

 ISAFが米英の「対テロ」掃討作戦と混然一体となって、3500人もの戦死者を出したことはまぎれもない事実です。

 これへの参加を米国が求めてくるかもしれません。そのときに拒否できず、「殺し、殺される」戦闘がここから始まる可能性があります。

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田畑でも「戦争法案は許さない」のノボリ(千葉県横芝光町)

 政府自身が「憲法違反」と言い続けてきた集団的自衛権の行使

 問題点の3つめは、これまでの政府の憲法解釈を根底から覆し、日本がどこからも攻撃されていないのに、集団的自衛権を発動して、アメリカの戦争に自衛隊が参戦し、海外での武力行使にのりだすことです。

 日本政府は、戦後、アメリカが行った武力行使に対して一度も「国際法違反」と批判したことはありません。こんな異常なアメリカ追従の政府が、アメリカが先制攻撃にのりだしたときに「間違った戦争」だと批判できるはずがありません。言われるままに集団的自衛権を発動し、無法な戦争に参加していくことになります。

 また、多くの憲法学者が集団的自衛権の行使を容認している戦争法案を違憲だと断じています。

 その最大の根拠は、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」としてきた過去の政府見解との「論理的整合性」がまったく説明できていない点にあります。「安全保障環境が根本的に変容した」としていますが、その具体的な事例を示すことはできませんでした。

 強行採決は空前のたたかいに追い詰められた結果

 自民、公明両党は、戦後最悪・憲法違反の戦争法案を強行可決しました。マスコミは、「今国会での成立は確実」などと報道していますが、たたかいはこれからです。

 法案は、予算や条約と違って、「自然成立」はありません。戦争法案を成立させるには、参議院で強行採決するか、衆議院で再議決を強行するしかありません。安倍政権が再び法案の採決強行をできないよう、世論と運動をさらに強めましょう。


「違憲」が多数

 戦争法案は、この間の世論調査でも、「憲法に違反している」56%、「違反していない」22%(「日経」6月29日付)、「憲法に違反していると思う」56・7%、「違反しているとは思わない」29・2%(「共同」同21日配信)など「違憲」が軒並み5割を超えています。また、8割以上の国民が「政府の説明は十分ではない」と答えています。

 地方議会でも戦争法案に「反対」「廃案」「慎重」などを求める意見書が265に広がっています。

 安倍首相自身も「国民の理解が得られていないのは事実だ」と認めています。「審議が尽くされた」どころか、「審議すればするほど疑問が深まる」のが戦争法案です。

(新聞「農民」2015.7.27付)
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2015年7月

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