「農民」記事データベース20150720-1174-07

3年続きの米価暴落は許されない


国の責任で過剰米を処理し
米価回復を確かなものに

 暴落した米価がこの秋、回復できるのかどうか、米農家にとって死活の問題となっています。

 農協系統が概算金や卸売業者向け相対価格引き上げの方針を示すなど、米価回復への機運が高まっています。しかし、一方では米の過剰は近年にない水準にあり、暴落した2014年産は農水省の調査でも引き続き下落を続けています。需給の改善を図り、米価回復への流れを確かなものにできるかどうか、政府・農水省の対応が問われています。

全農が相対価格引き上げを提示

 全農は卸向けに相対基準価格を示して収穫前契約の交渉を始めました。報道や卸業者の話では産地、銘柄によりますが、前年産から500円〜1千数百円程度の引き上げで、率にして4%〜12%程度です。

 ただし、これは、基準価格で実際は上下各10%の範囲で決めるとしています。昨年は20%近い暴落であり、この程度の回復では農家にとって納得できるものではありませんが、それすらも実現できる確かな保障はありません。

 というのも現在市場に流通している2014年産の価格との比較では1千数百円〜2千数百円の引き上げに相当するからです(グラフ1)。よほど需給が締まらない限り価格の回復は難しいのが実情です。

飼料米で需給が締まるのは来年秋

 いま、農水省が躍起になって進める飼料用米への転換。35万トンまで達し、さらに上乗せを図ろうとしています。農民連も飼料自給率の向上と当面の農家経営を守るため、多様な米作りを呼びかけ、各地で取り組みが進められています。しかし、こうした努力が需給の改善につながるのは来年の秋以降で、今年の秋の需給の改善には直結しません。

 今年の6月末在庫は過去16年間で最大の水準になる見通しです(グラフ2)。これへの対策を抜きにして新米の価格引き上げが可能なのでしょうか。安い古米が市場にあふれるもとで新米が行き場を失うなど、新たな流通の混乱も招きかねません。

 飼料用米などの取り組みで2〜3年後には需給は改善する可能性はあります。しかし、3年後(2018年)には国が生産調整から手を引く方針です。

 さらにTPP協議では「アメリカ・オーストラリア産米の別枠受け入れ」等が取りざたされ、先行きの不透明感は増すばかりで、需給は締まりようがありません。

 日本の米を守るため、民間任せ、市場任せをやめ、米の需給と価格の安定に政府が責任持つ姿勢を今こそ明確にすべきです。

 当面、政府の責任で過剰とされる30万トン程度を処理すること。少なくとも秋の作柄次第で、なんらかの需給調整の対策をとることを、今から明言して需給の引き締めを図るべきです。ようやく始まった暴落した米価回復への機運を確かなものにすることが強く求められます。

 国民と共同して米を守る運動を

 農民連は、全国代表者会議終了後の6月25日、農水省交渉を行い、7月3日には「軍事費削って、くらしと福祉・教育の充実を」国民大運動実行委員会による2106年度予算編成にあたっての申し入れでも、米価暴落の緊急対策を求めるなど、「国は米の需給に責任を持て」と強く要求してきました。

 農水省が市場原理に固執する現状の打破は急務です。

 また、米価下落は生産者はもとより流通業者や消費者にとっても大問題です。農民連は「瑞穂の国の米を守る運動」を進めるため、消費者団体や流通業界団体などへの申し入れ、懇談などの活動を展開します。

(新聞「農民」2015.7.20付)
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2015年7月

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