「農民」記事データベース20150713-1173-01

TPP

腐敗と不正にまみれた米TPA法

大企業が500億円もの金
バラまいて「法律買収」


譲歩暴走ストップの大運動を

 「TPA可決のため約2億ドル(270億円)献金」「上院議員、TPP支持企業から多額の献金荒稼ぎ」――アメリカのメディアやインターネット情報発信サイトは、貿易促進権限(TPA)法成立の裏で、巨額の政治献金が動いたことを報じています。

 大企業が議員に献金し、自らに都合のいい法律を作らせる――こんな「法律買収」で、TPP交渉を促進するためのTPA法が可決され、さらには交渉の中身にも大企業が口を出すなどということは絶対に許されません。

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企業による議員買収を象徴するドル札でできた米議会議事堂(米メディアが掲載)

 “じゅうたん爆撃”?500億円バラまき

 アメリカの政治資金情報を調査するNGO「マップライト」は、連邦選挙委員会公表の資料にもとづき、TPA推進の企業・団体が連邦議員に巨額の献金をしている事実を公表しました。それによると、下院議員への献金は2012年10月から2年間で1億9800万ドル(245億円)、上院議員には2008年10月から6年間で2億1800万ドル(270億円)にのぼります。

 期間の違いはありますが、合わせて500億円超が“じゅうたん爆撃”のように上・下両院のほぼ全議員にバラまかれ、TPAなど企業優位の法律制定を促進する役割を果たしたことになります。

画像  中でも、今年4月に「超党派TPA法案」を提出した三羽烏(ハッチ、ライアン、ワイデン各議員)とベイナー下院議長、マッコネル上院院内総務などへの献金額は突出しています(表1)。これらの面々は5月から6月にかけて、薄汚い駆け引きによって法案を成立させた張本人ですが、巨額の献金は“活躍”への期待報酬だったことはまちがいありません。

 採決の節目に集中献金

 もう一つ特徴的なのは、法案採決の節目に、反対派議員を賛成に寝返らせるために“ピンポイント爆撃” のように献金していること。

画像  イギリスの新聞「ガーディアン」(5月27日)は、アメリカの大企業が今年1月15日から3月15日にTPA法案への賛否が揺れている上院議員を狙い撃ちにして献金したことを報道しました。献金したのは、ノバルティスやモンサント、アフラックなどアメリカの150企業・団体で作る圧力団体「TPPのためのアメリカ企業連合」に加わっている企業(表2)。

 上院の採決は、審議打ち切り動議の可決に必要な票をわずか1票上回っただけという綱渡り状況で、この裏工作がなければ、上院可決さえ危うかったのが実態です。

 さらに、アメリカのNGO「KEI」は、9割以上が反対に回ると見込まれていた下院民主党議員に対し、医薬品企業が攻勢をかけた事実を告発。いったんは事実上否決されたTPA法案が6月18日の下院本会議でゾンビのように生き返った裏に、民主党議員28人が賛成に回った事情があり、このうち24人に医薬品企業が献金していたことを暴露しました。採決の結果は賛成218で、過半数をわずか1票上回っただけ。“ピンポイント献金”の効果は絶大だったというべきでしょう。

 薬品企業が突出

 とくに目立つのは医薬品企業の献金です。医薬品の特許保護期間の延長とニュージーランド、オーストラリアなどによる薬価管理の廃止がTPP交渉の最大の難関になっているからです。

 反汚職を掲げる米団体「リプリゼント・アス」は「ガーディアン」紙に「この種の明白な不正行為が合法である限り、われわれの政府は真に国民を代表する政府ではない」と述べています。

 ことはアメリカ政治の腐敗の問題にとどまりません。多国籍企業のためのルール作りであるTPP実現のために多国籍企業が金も口も出すことを通じて、世界中に被害を及ぼすという問題です。

 フロマン米通商代表は「日本とのTPP交渉はほぼ終えている」と言い放ち、「年内に議会の承認を求める」と強がり、甘利TPP担当相も「臨時国会で成立させる」と同調しています。

 腐敗と不正にまみれたTPAをテコにして進められるTPP交渉。これに目をつぶり、譲歩に譲歩を重ねる安倍政権の暴走にストップをかける大運動を強めるときです。

(新聞「農民」2015.7.13付)
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2015年7月

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