エネルギー・温暖化政策
政府が
パブコメ実施中
日本のエネルギー政策と地球温暖化対策をめぐって、いま、2つの重要なパブリックコメント(国民からの意見募集)が行われています。原発も地球温暖化もない未来のために、1件でも多くの意見を政府に突き付けることが求められています。
原発も温暖化もない日本へ
再エネ・省エネ飛躍させよう
安倍政権は6月初旬、(1)日本のエネルギー政策を策定する「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)」と、(2)日本の温暖化対策について世界(国連)に約束する「日本の約束草案(温室効果ガスの削減目標)」の原案を発表しました。
しかし、この2つの原案には、福島原発事故への反省もなければ、深刻化する地球温暖化への危機感もなく、自民党政権が原発事故が起こるずっと以前から続けてきた、旧態依然のエネルギー・環境政策となっています。
内容を具体的に見てみましょう。
(1)原発依存に再転換
現在、国内の原発は1基も稼働していません。つまり原発ゼロ%でも電気は十分たりているわけですが、安倍政権はこれを原発事故前の25%と同程度の20〜22%(2030年の電力に占める割合)に上げようとしています。
しかもこの数字は、原発事故後に改正された原子炉等規制法で原則「40年廃炉」とされた運転期間を無視しなければ実現不可能な数字です。「40年廃炉」の“原則”を守れば、2030年には半分以上の原発が廃炉になるはずで、つまりこの原案は、今ある原発の大半を再稼働させるだけでなく、建設中の原発も稼働させ、さらに本来は“例外”であるはずの「60年運転」を前提にしているのです。
(2)石炭火力発電を増大させる
石炭火力発電は、同じ電力量を発電するのに、最新鋭のものでも天然ガス火力発電の2倍ものCO2を排出し、温暖化対策に真っ向から逆行するものです。しかし安倍政権は、「石炭は安いから」との理由だけで石炭火発を優遇し、いま全国で石炭火発の増設計画が急増しています。
将来的には火力発電全体を少なくして再生可能エネルギーに転換するとともに、2030年には石炭火発は大幅に削減し、CO2排出量の少ない天然ガスを過渡的なエネルギーとして位置付けていくべきです。
(3)省エネと再エネの見込みが小さすぎる
一方原案では、原発と火力発電を「ベースロード電源」として絶対視し、省エネと再生可能エネルギーを冷遇しようとしています。再エネの22〜24%という数字の中には既存の大型水力発電も含まれ、太陽光、風力、バイオマスなど本来の再エネは13〜15%にすぎません。EU(欧州連合)が電力の45%以上を再生可能エネルギーに転換することを目標とするなど多くの先進国が40%以上の目標を掲げているなかで、日本のこの目標は先進国のレベルにはほど遠いといえます。
また省エネの視点が弱く、経済成長とエネルギー需要を過大に見積もる一方で、現在すでに可能な省エネ技術ですら見込んでいないという問題も含んでいます。
(4)温室効果ガス「2030年に13年比で26%削減」は低すぎる
気候変動の悪影響が日々深刻になるなかで、気温上昇を2℃未満に抑える重要性が科学的に明らかとなり、これが今国際合意となっています。この「2℃目標」を達成するには、先進国は2050年には80%削減する必要があり、日本でもこの「2050年80%削減」の長期目標を2012年に閣議決定しています。
しかし今回の安倍政権の原案は「2℃目標」への言及もなく、「2050年80%」の長期目標を達成するにもほど遠い中期目標です。安倍政権のこの姿勢には世界中からも非難の声がわき起こり、NGOは40〜50%の削減が可能と提言しています。
パブリックコメントの提出方法
「エネルギーミックス」「約束草案」ともにインターネット、ファクス、郵送で提出します。締め切りは、エネルギーミックスは7月1日、「約束草案」は7月2日です。
農民連も加盟している「公害地球環境問題懇談会」が、パブリックコメントの募集書式に合わせて、「原発を即時ゼロ%に」「省エネ・再エネの抜本的な普及」などを内容とする提出文案を作成しています。意見提出する人や団体の名前、連絡先、一言メッセージなどを書き込めば、すぐに提出できる文面となっていますので、ぜひ活用してください。
▼公害地球懇のパブコメ専用ページ http://www.jnep.jp/energy/RE−29.html
▼または、農民連本部の担当、満川(みつかわ)までご連絡ください。TEL 03(3590)6759
(新聞「農民」2015.7.6付)
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