「農民」記事データベース20150629-1171-14

私と土づくり
国際土壌年にあたって

千葉県農民連 越川洋一(横芝光町)


堆肥で土が変わり作物にも変化

 作物の根は有機(アミノ酸、炭水化物)を吸収するのか、しないのか――。以前は、肥料養分は硝酸態窒素やアンモニア態窒素にならないと吸収されないとされ、それが近代的農業技術の基盤とされてきました。しかし、今では、有機物のかたちでも作物の根から吸収できることを、国も認めています。だからこそ有機JAS法が2006年に施行されたのですが、実際のところ、生産現場では今でも苦悩と混迷が続いています。

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ピーマンの生育状況をみる越川さん

 おいしい野菜づくり

 産直センターは、特に消費者と顔が見える関係ですので、おいしさと高品質な野菜が求められ、おいしい野菜こそ信頼と連帯の絆となります。ここ10年余、高名な先生方の指導と実践によって、有機栄養論にこそ作物の生理の真実があると確信するに至りました。

 農業高校などの学校では化学肥料・農薬使用栽培が教えられていますが、多肥多農薬の安全性への反省から餅、野菜、米を取り扱う房総食料センターを立ち上げてきました。産直の開始は1971年からですから、集団としての栽培技術の追求は40年にわたる長く、重い課題でした。

 センターは「有機省農薬」を旗印に健康野菜の生産にまい進してきましたが、一方で、その手法に確信がなく、評価が定まりませんでした。しかし、栽培技術の認識の間違いは実践を通して検証されつつあります。

 適切な有機率求め

 おいしい野菜作りのための土作りとは何か。全天候型の土はどう作ったらいいのか。ふかふかの土、透水性、排水性、保水性にすぐれた団粒構造の土を作るために、土の有機率3%を目指して4〜5トンの堆肥を年に2回入れ続けました。

 以前の指導では、堆肥は窒素、カリ肥料として500キロでよく、それ以上は土がメタボになるというものでした。

 これに従って考えると、堆肥を5トンも入れると窒素2%の堆肥だと100キロの窒素分が入ることになり悩みました。しかし、3〜4年すると土が変わり、できる作物の味と収量が違ってきて、有機態窒素だから大丈夫だとわかりました。

 土を分析するとCEC(陽イオン交換容量、乾土100グラム当たりに保持することのできる陽イオンの数)が12から25〜30になりました。勉強してみると作物はアミノ酸、水溶性炭水化物を根から吸収するという作物生理の真実が実践的にわかったのです。

 アミノ酸肥料、堆肥、ミネラル肥料を駆使し、土壌分析を指針として、土作りは物理性、微生物性、化学性の側面から追求しています。作物に求めるおいしさ、鮮度、栄養価、品質、収量、耐天候性も、根から吸収される水溶性炭水化物の量に影響されるとわかり、水溶性炭水化物が多く残る堆肥の作り方、材料、微生物、62度を基準とした温度管理に腐心しています。

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積み上げられた堆肥

 仕事が楽しくなって

 細胞と繊維がしっかりした野菜は農薬に頼らなくてもよくなりました。私たちが求める本当の地力は水溶性炭水化物のことではないのかと思います。この段階に至ると本当に仕事が楽しくなります。

 消費者からは「野菜がジューシーでフルーティー、シャキシャキ感がいい」と感激と期待の便りが届きます。直売所ではコカブやピーマン、チンゲン菜の出荷が待たれます。輸入拡大政策から自給率アップに向けて政策転換をたたかいとり、対案としての有機栽培を定着させ、消費者の健康と笑顔、連帯を強くしたいと考えています。

(新聞「農民」2015.6.29付)
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2015年6月

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