分析センターだより
台湾の遺伝子組み替え
作物事情調査を報告
アメリカからの輸入のGM大豆
道端で枝豆にまで成長に驚き
5月中旬に、遺伝子組換えナタネ調査隊の番外編として、お隣の国、台湾に遺伝子組み換え作物が自生しているかについて調査をしてきました。今回は、台湾の遺伝子組み換え作物事情を報告します。
高雄の穀物ふ頭と内陸の搾油工場調査
さて、台湾は食用油といえばほとんどが大豆油のようです。その原材料は、遺伝子組み換え大豆(以下、GM大豆)を生産するアメリカからの輸入に頼っています。
台湾は、日本同様、遺伝子組み換え作物の商用栽培は行われていません。しかし、私たちが10年間、日本で行ってきた調査経験からすれば、すでに台湾では、港湾地域や工場までの運搬路にGM大豆やコーンが勝手に自生していると考えられていました。そこで今回、港湾都市・高雄にある穀物ふ頭と搾油工場周辺、さらに内陸部の台南市隆田にある搾油工場周辺を、ひっそりと自転車や徒歩で探索、その様子を見てきました。
2地点の周辺は推測通り、輸送中にこぼれたとみられる大豆がたくさん落ちていました。遺伝子組み換え大豆検出試験紙で試験をすると、どれもGM大豆であることが確認されました。特に隆田周辺では、枝もたわわの枝豆にまで成長した個体が幾つも見つかり驚かされました。日本では、こぼれ落ちた大豆がここまで立派に成長した姿は見たことがありません。おそるおそる試験をすると、これらはGM大豆が発芽した個体であることがわかりました。除草剤ラウンドアップをかけても枯れない枝豆です。
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枝豆に成長したGM大豆(台南市隆田) |
GM大豆の自生は 広範囲にわたった
こぼれ落ちにより自生が起きるのは台湾でも同じようです。今回確認できた大豆は自家受粉性が高いため、交配、雑種化する可能性は低いとされています。野生化の例もないようです。この点でGMナタネと比べれば生物多様性への影響は小さいと評価されています。
とはいえ、枝豆にまで成長した個体が見つかった隆田は、陸揚げ場所と予想される高雄から陸路で90キロメートルほどにあることを考えると、今回確認できたのはごく一部で、実態は広範囲にわたるとみられます。長距離輸送は自生の把握が困難なだけでなく、管理や対策が難しいことがわかっており、具体的な調査が行われるまで楽観はできないといえるでしょう。
日本よりきびしい食品表示制度に変更
7月1日から、台湾では、日本の遺伝子組み換え食品表示義務制度より厳しい制度がスタートします。日本では、遺伝子組み換え作物不使用の表示は、混入率5%以下であれば可能ですが、台湾はこれを厳しくし、3%まで強化しました。今後、EU(欧州連合)並みの0・9%を目指しているようです。
また、日本ではしょう油や食用油には表示義務がありませんが、台湾は今回の改正で、これら高度に加工された食品にも表示をするように制度を大幅に変更しました。この法律の内容は、日本より一歩、二歩先を進むものです。制度改正で、関心が高まっている台湾です。近日中に、今回の調査結果を台湾の農民組織に伝え、「基因改造作物(遺伝子組み換え作物)」の自生調査活動へつなげられればと考えています。
(八田)
(新聞「農民」2015.6.29付)
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