モザンビーク
プロサバンナ開発事業
無効を求め記者会見
モザンビーク・ブラジル・日本の
市民団体・農民が共同声明
日本のODAで大規模開発を推進
土地収奪を公共政策の名で正当化
アフリカ大陸南東部のモザンビークで同国と日本、ブラジルの3カ国政府が進める大規模開発事業(プロサバンナ)について、モザンビーク政府はこのほど、計画骨子となる「マスタープラン」の初稿を公開し、住民向け公聴会を開催しました。これに対して3カ国の市民団体と農民が6月4日に共同声明を出し、公聴会は住民の十分な参加を保証せずに行われたとして「深い懸念と憤り」を表明し、無効にするよう求めました。
配慮欠く土地収用農民が懸念を表明
プロサバンナ事業は、モザンビーク北部のナカラ回廊を、大豆や他の穀物を栽培・輸出する「世界の穀倉庫」に変えようと、日本、ブラジル、モザンビーク政府が2009年に合意。日本の政府開発援助(ODA)事業で、日本がブラジルで1970年代に行った大規模農業開発(セラード開発)がモデルです。
対象となる1400万ヘクタール(日本の耕地面積の約3倍)には約400万人が暮らし、多くは小農民です。
モザンビーク最大の農民組織で国際農民組織ビア・カンペシーナに加盟する「モザンビーク全国農民連合」が2012年10月、この事業について農民の基本的ニーズへの配慮を欠く「トップダウン式計画」だと非難し、土地収用が進むことに懸念を表明しました。モザンビークの農民と市民団体は、日本やブラジルの諸団体とも結んで反対運動を展開。モザンビーク政府は作成中の事業のマスタープランの草案は事前に関係者に開示し議論することを約束してきました。
しかし、同政府は3月末、204ページのマスタープラン初稿を、農民の多くが理解できないポルトガル語でウェブサイトに公開。住民が理解するための十分な努力をせずに、4月20日から公聴会を開催してきました。
反対農民への脅迫嫌がらせを告発
6月4日の共同声明は、公聴会実施に際して、参加者の事前の選別や制限、政府関係者と与党支持者の動員が行われたことを指摘するとともに、事業に反対する農民への嫌がらせや脅迫が行われたことを告発。プランの内容についても、「投資促進のための土地確保」が真の目的だとし、「土地収奪メカニズムを公共政策の名の下に正当化しようとする試み」と糾弾しました。
日本の市民団体も6月8日、この問題で記者会見を実施。調査のため現地公聴会に参加した日本国際ボランティアセンターの渡辺直子さんが、情報不足や混乱のため多くの住民が参加できなかったことを告発するとともに、公聴会で反対意見の表明を主催者が制止する様子などを撮影したビデオを放映しました。
|
プロサバンナ事業マスタープラン初稿公聴会の様子について報告する渡辺直子さん(左端) |
共同声明への賛同団体は、3カ国を中心に70団体を超え、農民連も含まれます。
(新聞「農民」2015.6.22付)
|