下げ止まらない米価
政府の責任で
需給の安定と
価格の回復を
関連/14年度産ナラシ補てんあっても手取り1万円には届かず
各地の田植えもまもなく終わろうとしています。昨年秋に大暴落した米価。政府の「対応」とその後の米価の動向はどうなっているのでしょうか。
昨秋の再来は許されない
大暴落後さらに6カ月連続下落
米価で唯一公式の統計に用いられているのが、政府の「相対取引価格調査」(以下相対価格)で、1カ月遅れで公表されます。秋に大暴落した2014年産米は、その後も毎月下落を続け、過去最低の記録を更新しています。5月29日公表の4月の相対価格は全銘柄平均で1万1038円(税別)と前月を20円余り下げ、昨年同時期と比べると2539円もの下落ぶりです。
政府は農民の激しい怒りを受けて、昨年11月、「2014年産の対応」なるものを出しました。しかし、その中身は「農家への緊急融資」「ナラシ(収入減少影響緩和)対策のPRと加入促進」「生産コスト低減に助成金」など低米価の定着を前提としたもので、米価の回復につながらないものばかりでした。
6月末在庫は平年比30万トン超の見込み
こうしたなかで、民間団体の米穀安定供給確保支援機構が、11月以降に出荷を遅らせた米に保管料を助成する対策がとられました。20万トンの計画に対して各産地から35万トンが積み上がりました。しかし、11月以降に古米にして(安く)出荷することが前提で、しかも産地の都合で11月以前に取り崩しも可能であり、何よりも民間任せの対策のため、需給引き締めの決め手にはなっていません。
2014年産の流通状況は4月末現在、全国平均で契約が83%、実取引の進ちょくを示す販売は50%と公表されました。
7〜8カ月を過ぎた時点で未引き取り分が50%も残り、今年の6月末在庫は230万トンと、通常を30万トン程度上回る見通しで、現状を放置すれば昨年秋の再来を招きかねません。
概算金の引き上げは需給を改善してこそ
「概算金の下げすぎ」を問題にされてきた全国農業協同組合連合会(全農)は、今後の概算金のあり方として「過去5年間の中庸3年の平均をとる」と表明しています。言葉通りなら銘柄にもよりますが、1千数百円〜2千数百円程度の引き上げになります。農家にとって概算金の引き上げは当然ですが、前提となる需給の改善が後回しでは、新たな流通の混乱も招きかねません。概算金引き上げの流れを確かなものにするためには、需給の改善は待ったなしです。
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沖縄県石垣島では稲刈りが始まりました |
飼料米への転換もTPPで水のあわ
政府は2015年産の生産数量目標を14万トン減らしたうえ、さらに12万トンの生産調整の強化(深掘り)を求めて「自主的取り組み参考値」を都道府県に配分しました。深掘りの決め手は飼料用米で、農協系統は60万トンの目標で取り組み、5月15日現在、35万トンまで積み上げています。農水省は農協系統と一体でさらに上乗せを図ろうと躍起になっています。
政府は飼料用米などの取り組みが進めば、2〜3年後には需給は均衡するとしています。その一方で、3年後(2018年)には、国が全面的に生産調整から手を引く方針で、加えて、TPP日米協議でアメリカの「21万5000トン要求」や日本の「5万トン以上受け入れ」等が取りざたされ、これでは需給は締まりようもなく、努力も水の泡です。
過剰米処理など本筋要求で追い詰めよう
需給の安定と米価の回復のためには民間任せの対応策ではなく、(1)政府の責任で過剰米を処理し米価の回復をはかれ(2)生産調整から手を引く方針を撤回せよ(3)TPP交渉からの撤退とミニマムアクセス米の廃止など、本筋での対策を要求して安倍内閣を追いつめ、農政の転換をはかることが何よりも必要です。
流通が激変するもとで産地、米業者双方から直接結びつく動きが加速しようとしています。この間、産地から米業者へと独自にルートを築いてきた農民連の準産直米。その経験と実績をいよいよ生かすときです。
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「10キロ2280円」などの安売りも |
主食用も飼料用米も大いに作り届けよう
また、飼料自給率の向上と当面の農家経営を守るうえで、制度を活用した飼料用米の取り組みも重要です。各地で農民連ふるさとネットワークを介して飼料会社との取り組みが進んでいます。飼料用米の推進を重視する政府は、「申請の手続きは7月末まで1カ月延長し、田植えが済んでも飼料用米へ変更は可能」としています。
ふるさとネットワークは、主食用米をはじめ多様な米を大いに作ることを呼びかけています。こうした実際の取り組みを通して、制度の改善へ要求と運動も強めることが求められています。
農水省は6月5日、2014年産米ナラシ補てん額が過去最高の総額514億円になったと発表しました。米だけでは、全国平均で1俵あたり2480円としています。
ナラシは減少率の上限20%しかカバーできず、しかも減少額の90%しか補てんしません。実際の減少額は2756円以上です。
514億円の補てんといいますが、国費は385億円で、129億円は生産者の拠出金です。
ナラシ加入率も面積比率で4割でしかなく、ナラシ移行のための円滑化対策による補てん額(今年限り)は1俵当たり800円〜900円で、文字通り「焼け石に水」です。
「少しでも、もらえるだけまし」ということですが、ナラシがセーフティネットたりえないことは明らかです。
「『ナラシ対策』があるから、過剰米の市場隔離などの米価下落対策は必要ない」という政府の姿勢こそが最大の問題なのです。
(新聞「農民」2015.6.22付)
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