農協解体法案について
全農協労連 舘野豊書記長に聞く
関連/総力あげてTPP阻止
農協改革関連法案が国会に提出され、衆議院で審議入りするなど、緊迫した局面を迎えています。同法案の問題点を全農協労連の舘野豊書記長に聞きました。
一括法案でわずか20日間審議
会期延長してでも通すねらい
家族農業締出し企業参入進める
――農協改革関連法案のねらいはどこにありますか?
舘野 今回の「改正」案の根っこには、農業の中心から家族農業経営を締め出し、企業の農業参入を進め、その邪魔になる全国農協中央会(JA全中)の弱体化、農業委員会の解体を狙うものです。また、農協法8条の「営利を目的としてその事業を行ってはならない」とされていた、いわゆる「非営利規定」が削除され、「組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とする」などと変更されます。これは農協の営利化、株式会社化を進めることを意味します。農協のもつ「営農」事業と「金融・共済」事業は車の両輪ですが、これらを切り離し「営農」に特化すれば、今の農協の経営は成り立たなくなります。結局、農協グループのもつ市場や資産を、大企業や投資家のもうけのために差し出そうというのです。
安倍暴走政治の危険性明らかに
――4月3日に閣議決定がなされ、5月14日に衆議院で審議入りしました。
舘野 今回は、「改革関連法案」提出という段取りで、52にも及ぶ関連法の「改正」を一括法案で通そうという荒っぽいやり方です。わずか20日間の審議で強行しようというのです。同じように国民的な批判を浴びている「戦争法案」と同様、6月24日の国会会期末までに通らなければ、会期を延長してでも通そうとしています。まさに安倍暴走政治の特徴が現れていると思います。
参考人質疑でも多くの問題点が
――5月27日には、衆院農林水産委員会で参考人質疑が行われましたね。
舘野 私も傍聴しましたが、北海道大学の太田原高昭名誉教授は、北海道の実情から、スーパーやガソリンスタンドなど、地域の住民にとってライフラインの役割を果たしている農協の現状を述べました。もし地域から農協がなくなってしまうと、人が住めなくなり、過疎化がますます進んでしまいます。鳥取県農業会議の川上一郎会長は、農家の意見を行政に届ける建議の必要性や、地域の顔としての農業委員の重要性を語りました。他の参考人も、地域に密着した企業の立場から、農協との協力・協同の大切さを発言しました。農協法以外にも農業委員会法や農業生産法人にかかわる農地法など、問題点が多く、今国会だけで決められるものではありません。
地方から共同広げ、法案阻止へ
安倍政権打倒の運動と結んで
地方議会で広がる意見書の採択
――今後の運動をどう進めていきますか。
舘野 「農協改革」に反対する署名がいま8万人分を超えていますが、さらに広げていきます。全農協労連をはじめ、全労連、農民連、新日本婦人の会、自治労連、生協労連、全国食健連の7団体で構成する「安倍『農政改革』に反対し、食料・農業・地域を守る大運動」連絡会議を軸に、中央での行動を進めると同時に、地域での学習会、シンポジウム、集会などの行動をさらに強めます。「農協改革に関する意見書」を採択した自治体は、岩手県議会をはじめ、岩手で2市6町3村、山形で2町、新潟で3市2町1村、愛媛で1町などに広がっています。さらに地方議会への働きかけも行っていきます。農協「改革」の大本には、安倍暴走政治があり、安倍政権打倒の運動と合流して、取り組んでいきたいと思います。
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「農協つぶしを許すな」とこぶしを振り上げる連絡会議の人たち=5月14日 |
山形県連絡会 断固反対集会開く
山形市の霞城公園で5月21日、「TPP断固反対山形県連絡会」(JAグループ、農民連、食健連を含む21団体で組織)主催のTPP反対集会が開かれました。県内全域から、1500人が集まり、農民連は田植え、サクランボの作業など多忙を極めるなか、市内を中心に約30人の役員、会員が参加しました。
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山形県農民連も「TPP交渉からの撤退を」と参加しました |
長沢豊JA県中央会会長が主催者あいさつで「TPPは国の主権を侵害する危険性がある。交渉内容の全容が開示されず、国民的議論がなされないままに、政府は早期妥結を目指している。米の特別枠を設けるとしているが、現場は混乱している」と述べました。また、吉村美栄子知事から激励のメッセージが寄せられました。
各団体のリレーメッセージでは、県生協連など3団体の代表が反対の声をあげました。
最後に、「日本の食と暮らし、命を守るため、今後とも広範な国民各層との連携のもと、TPP断固反対運動を総力を挙げて展開していく」という集会特別決議を参加者全員で確認した後、シュプレヒコールを唱和し、市内2コースに分かれ、デモ行進を行いました。
集会に参加した山形市内の果樹農家で山形地方農民連の会長でもある吉田吉弘さんは、「サクランボの作業が忙しい中でもまわりの農家も誘ってきた。いくら忙しくても傍観は賛成と同じこと。何としてもTPPを阻止したいという思いで参加した」と話していました。
(山形県農民連 洞口昇一)
(新聞「農民」2015.6.8付)
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