世界のTPP反対運動
“ここが正念場”と断念向け全力
雇用や家族農業を破壊するTPPはやめろ―。日米両政府や財界などTPP推進派が交渉の膠着(こうちゃく)状態打破に向け焦る中、各国の反対運動は「ここが正念場」としてあらゆる手段を用いて断念させようと全力を挙げています。アメリカでは首都のほか、地方でも運動が高揚し、ニュージーランドでは全国規模の行動を成功させました。
民主党議員の抵抗反対運動が後押し
オバマ政権の閣僚たちは、TPPを早期成立させるためTPA(貿易促進権限)法案の可決に向け、議員の説得に当たっています。ビルサック農務長官が説得した議員の一人は「TPA法案への反対を求める電話は1200本きたが、賛成の要請は2本だった」と述べてTPA賛成に回るのを尻込みしています。
TPA法案の議会提出は、与党民主党のワイデン上院議員の抵抗で遅れています。ワイデン氏は、共和党議員とTPA法案作成協議を続けてきた人物。TPP型の通商協定に賛成してきたワイデン氏の抵抗の背景には、アメリカのTPP反対運動の存在があります。
運動側は、TPAをここで阻めば、日程上の理由から来年11月の大統領選前のTPP成立は極めて困難になるとして、懸命に運動を展開。議員への電話や書簡送付、電子メールを使った働き掛けのほか、直接議会と選挙区の事務所に出向いて訴えています。
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ワイデン上院議員にTPAとTPPへの反対を要請するため事務所に詰め掛けた人々 |
ワイデン議員に対しては、首都の議会事務所、地元オレゴン州の事務所と自宅、ニューヨーク市の別宅など議員が赴くあらゆる場所に人々が陣取りTPA反対を要請しています。オレゴン州の有権者を対象にした世論調査(2月)によると、ワイデン氏がTPAとTPPに賛成した場合、来年の上院議員選挙で同氏に投票しないという人は50%に上りました。
米労組や家族農家の組織も運動強める
労組や家族農民の組織も運動を強めています。3月初め、アメリカ最大の労組の中央組織であるAFL・CIO(アメリカ労働総同盟産別会議)傘下の組合員ら約400人が全米約20州から詰めかけ、議員や秘書ら120人以上に働き掛けました。同組織はTPA廃案を最優先課題と位置づけ、連邦議会候補への政治献金を当面差し止めると発表しました。
アメリカの家族農民20万人が加盟するナショナル・ファーマーズ・ユニオンは、全ての議員に対して、TPA反対を呼び掛ける書簡を送付。全米家族農業者連合(NFFC)も反対運動に加わっています。
自治体レベルでも反対の動き広がる
一方、ウィスコンシン州デーン郡、カリフォルニア州リッチモンド市、バークリー市が、TPPの適用除外を宣言する「TPPフリーゾーン」決議を採択。ウィスコンシン州のマディソン市はTPP反対を決議するなど、自治体レベルの動きも広がっています。
TPPフリーゾーン決議案は2月半ば、ニューヨーク市議会にも提出されました。3月9日には提案者のヘレン・ローゼンタール市議と地元ニューヨーク州選出の下院議員らが市庁舎前で決議の早期採択を訴えました。
ニュージーランド全国23カ所で行動
ニュージーランドでは3月7日、全国23カ所で一斉抗議行動を行いました。人口約460万の同国で抗議に参加したのは1万人以上。昨年11月にも全国規模の抗議行動を行っていますが、今回新たに実施地域が6カ所増えました。
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3月7日、ニュージーランドのクライストチャーチで行われたTPP反対デモ(ラジオ・ニュージーランドのウェブサイトから) |
TPA法案 アメリカでは、憲法上議会が通商交渉権を持つため、行政府が合意した通商協定を議会が修正することができます。この権限を一定の条件を付け行政府に移譲させ、議会には協定の修正を認めず、一括承認または不承認だけを認める法案。法案提出に向け現在超党派で協議中です。与党民主党の下院議員の8割が反対する中、同党のワイデン氏がTPAの下で妥結した協定でも議会が求める基準を満たしていなければ修正を認めるよう求めたのに対して、共和党側が反発し、提案が遅れています。
(新聞「農民」2015.3.30付)
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