「農民」記事データベース20150330-1159-01

堆肥化の取り組み交流・施設見学

生ごみは宝だ!資源だ!

生ごみリサイクル交流会


堆肥化は決して高くない

 今年は国連の「国際土壌年」です。各地で様々な取り組みが始まっています。生ごみを堆肥化して土に戻し、豊かな土作りをすすめる有機農産物普及・堆肥化推進協議会(堆肥化協会)は3月15、16の両日、山梨県富士河口湖町で「生ごみリサイクル交流会―経験交流と現地見学―生ごみは宝だ! 堆肥化継続のために」を開催し、各地から55人が参加しました。

 生ごみ堆肥化に公正な評価を

 1日目の冒頭、堆肥化協会の名誉会長、瀬戸昌之さん(東京農工大学名誉教授)が「なぜ生ごみ堆肥化なのか。継続のために必要なこととは何か」を講演。「堆肥化の目的や意義は一人一人違うが、どういう社会をつくっていくのか、大切なことが意識されていない」と生ごみ堆肥化は将来の社会のあり方に関わるものであることを述べました。そのうえで「焼却する方が安いと言われているが本当にそうなのか。原発は安くて安全と言われていたが、全く違った。ごみ処理費用についても検証する必要がある」と述べ、「環境の保全費などが全く評価されていない現状がある。洪水防止や地下水滋養の価値なども考慮した公正な評価が必要だ」と訴えました。

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充実した交流会に参加者から笑顔があふれました

 茨城県取手市で生ごみリサイクルに取り組んでいるNPO「緑の会」の恒川敏江会長と恒川芳克理事が運動拡大の課題について発言。「拡大のネックはリサイクルの経費が高いと思われていることと、行政サイドの考え方とずれがあること。しかし、行政のお墨付きがあると、住民への説明はやりやすい」と話し、今後の運動の拡大には「法制化が絶対に必要。また、『生ごみを資源にしなければいけない』と考える人を増やすことが大切」と話しました。

 美しい環境を子どもたちに

 地元富士河口湖町で生ごみの堆肥化に取り組んでいるポトリの会の会計、小林さかえさんが活動を紹介しました。ポトリの会は未来の子どもたちに、素晴らしい環境を残したいと、2008年1月に20人余りの主婦によって発足しました。日々の暮らしの中でできることを考えた結果、まずごみの分別から始めることに。定期総会で町の環境課長を呼んで町のごみの現状を説明してもらったところ、ごみ処理に多くの費用が掛かっていることにがく然。この問題を伝えるのに、まずは結果を出して知ってもらおうと、生ごみの堆肥化に取り組み始めました。身延町の峡南衛生組合に視察に行き、自分たちでぼかし(発酵促進剤)作りに成功しました。この取り組みを町の環境課に報告すると、古い給食センターの建物をぼかし作りの工房に提供してくれ、販売の道筋も作るなど積極的な協力が得られました。現在は130人の会員が参加し、ぼかしの作製、袋詰めなどを行っています。小林さんは「ぼかし作りでみんなが元気になっている。みんな楽しく活動しています」と話していました。

 東京都日野市の「ひの・まちの生ごみを考える会」からは佐藤美千代代表が発言。13年の活動を紹介しました。同会は、コミュニティーガーデン「せせらぎ農園」を開設し、集めた生ごみを直接畑に投入し堆肥化しています。日野市も行政とも連携を緊密に活動していますが、佐藤さんは「行政に頼りきりではなく自分たちのできる範囲でやることが大切です」と話し、他の参加者から関心を集めていました。

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会場からは多くの質問が飛び出しました

 参加者からは行政との関係や堆肥の活用方法など活発な質問が飛び出し、充実した時間となりました。

環境負荷を軽減し
地域循環型社会へ

 堆肥化施設見学 微生物の力実感

 2日目は現地の堆肥化施設の見学を行いました。まずはポトリの会のぼかし工房を見学。施設の光熱費は町が負担していると言います。楽しそうな作業の様子が伝わり、微生物の力を大いに体感していました。

 次に旧上九一色村にある富士河口湖町の施設「富士ヶ嶺バイオセンター」を株式会社ゼロ(指定管理者)の本田辰三社長が案内しました。同センターは家畜のふん尿を堆肥化しています。ふん尿を処理しているにもかかわらず、ほとんどにおわないことに驚きました。「微生物を利用し発酵をうまく管理すれば、においはほとんど発生しません」と言います。同センターでも生ごみの堆肥化に今年度から取り組みます。「高カロリーの生ごみを入れてメタン発酵させることで、センターの電気は自給できるようになる見込みです」と本田社長。同センターで製造した発酵促進剤もお土産に配られました。

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におわない堆肥化施設を見学する参加者

 最後は身延町の峡南衛生組合を視察。ここでは、身延山の宿坊や下部温泉の宿泊施設などから出た生ごみを堆肥化しています。所長、次長から説明を受けたあと、実際に施設を見学。使っている資材や生ごみ回収用の容器などについて、たくさんの質問をしていました。

 充実した話し合いと視察を行うことができ、参加者は大満足の交流会となりました。来年はもう少し暖かくなってから、交流会をしようと約束し、解散しました。

(新聞「農民」2015.3.30付)
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2015年3月

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