TPP
アメリカもビックリ!
安倍政権の屈服・二枚舌外交
「漂流」ではなく「沈没」させよう
カトラー米次席通商代表代行が「日本があまりに前向きなので驚くと話している」(アメリカの財界団体、米国商業会議所のオバビー副会頭、共同、2月28日)。カトラー氏は1月に来日した際に、日米の相違点を解消しようとする日本政府の「真の責任感」に励まされたとも語りました。
日本に対し農産物自由化圧力をかける先頭に立っているカトラー氏が「驚き」、「励まされた」のは、アメリカ国内での政府と議会のゴタゴタに一言も文句を言わず、日本の国会決議を踏みにじって、米や牛肉・豚肉などで譲歩に次ぐ譲歩を重ね続ける安倍政権の屈服・弱腰外交に対してです。
国会決議のため交渉が困難に
農産物自由化・関税引き下げの譲歩案をアメリカに提示している“下手人”、大江博TPP首席交渉官代理は「海外プレス向けの説明会で、国会決議があるため、TPP交渉が困難になっていることを強調した」といいます(ロイター、3月9日)。
国内向けには「国会決議を守るためギリギリの交渉をしている」と言いながら、海外プレス向けには国会決議をジャマ者扱いする二枚舌。安倍首相が「米の重要性を強く強く強く主張している」と空々しく声をはりあげる一方で、甘利TPP担当相がアメリカ産米の輸入について「1粒も増やさないということは不可能だ」と述べるなど、二枚舌と国民だましは徹底しています。
TPAが不成立なら「交渉崩壊」
一方、アメリカ国内の動向は難航・漂流のきわみです。問題は2つ。
一つは、貿易権限促進(TPA)法の成立のメドが立っていないこと。アメリカでは憲法上、通商交渉権限は政府ではなく議会が握っており、TPP妥結のためには、TPA法を成立させ、政府が議会から権限を譲ってもらうことが不可欠です。これがないと、議会がTPP協定を修正する権限を持つため、妥結した協定が最終版になる保証がないからです。
TPAをめぐっては、オバマ与党の民主党議員の大多数が反対、野党の共和党議員の中にも反対派が少なからず存在しています。これまでも、TPAは1票差〜数票差で可決するなど、ギリギリのきん差で可決してきた歴史があり、開けてみなければわからない状態。
さらに、民主党はTPAに議会修正権を加えることを要求しており、1月中といわれていたTPA法案の提出は4月に持ち越されています。議会修正権を封印するためのTPAに修正権を加えるなどというのは矛盾だらけであり、共和党側は「TPAを完全に台無しにする」ものを受け入れるわけにはいかないと拒否しています。
加えて、日本では「連合」にあたる全米労働総同盟をはじめ60の主要労働組合が国会議員に対しTPA反対を働きかけるなど、アメリカの反対運動はもりあがりを見せています。
ビルサック農務長官は9日、「議会がTPAを承認しなければ、TPP交渉の崩壊につながる可能性が極めて高い」と危機感をあらわにし、日本・カナダ両政府は「TPAが成立しなければ最終的な合意には至らないと米政府当局者に直接伝えた」と報じられています(ワシントン・トレード・デイリー紙)。
為替条項持ち出せば「交渉決裂」
もう一つは、アメリカ議会がTPP協定に為替・通貨条項をもりこめと要求していること。ドル高(円安)がアメリカ企業に打撃を与えていると称して、日本などを「為替操作国」と断定し、報復的に関税引き上げを行うことができるという規定をTPP協定にもりこめという内容です。
円安誘導はアベノミクスの中核的な政策であるために、日本のマスコミはこの問題をほとんど報じませんが、アメリカでは大問題になっています。たとえば、昨年12月30日付のニューヨークタイムスは、為替条項を要求する議員が過半数をはるかに超えており、その比率はTPA反対よりも高いと報じています。
一方、アメリカ政府は、TPP交渉に為替条項を付け加えることは、交渉を完全に壊すものとして反対しており、日本政府も「交渉で為替操作に関する議論は行われていないが、仮に議題になれば、交渉の決裂を意味することになる」(大江首席交渉官代理)と述べています。
それでもアメリカ議会が為替条項を持ち出す可能性は高く、そうなれば交渉は抜き差しならない事態に陥るでしょう。
両政府が合意に向け暴走の危険
もちろん、日米両政府は最終期限とされる5〜6月中の合意に向けて、さらに暴走する危険があります。いっせい地方選直後には日米首脳会談も行われます。しかし、追い詰められているのはオバマ政権であり、安倍政権です。追い詰めてきたのはTPP交渉参加国の国民の反対運動、とくに安倍政権のTPP暴走に立ちはだかってきた日本国民の世論と運動です。
TPP暴走や農協つぶしで国民に挑戦する安倍政権をいっせい地方選挙で追い詰め、悪政にストップをかけようではありませんか。TPPを「漂流」状態から「沈没」に追い込みましょう。
(新聞「農民」2015.3.23付)
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