「農民」記事データベース20150309-1156-01

全国沿岸漁民連絡会(仮称)
結成をめざす交流会

沿岸漁業こそ
日本漁業の主役

関連/「安倍政権NO!☆0322大行動」


全国で“横”につながって
家族漁業者の声あげよう

 「全国沿岸漁民連絡会(仮称)結成をめざす交流会」が2月21日、東京都内で開かれ、千葉、岩手、福島、北海道の沿岸漁業者ら50人余が集いました。

 この交流会は、昨年10月に岩手県漁民組合の呼びかけで開催された漁業フォーラム「復興と漁業の展望を探る」で、沿岸漁業者の全国組織づくりが呼びかけられたことを受けて、開催されたものです。この呼びかけに全国各地から「それはいい」「オレも仲間に入りたい」という声が上がっており、あらためて同漁民連絡会の結成準備会の発足に向けて、交流会が開かれることになりました。

 北日本漁業経済学会会長で茨城大学客員研究員の二平章さんが、日本漁業の現状と沿岸漁業の役割について基調講演しました。二平さんは、日本の漁業経営体9万5000のうち、78%が沿岸漁業であることを紹介し、「小規模・家族経営の沿岸漁業こそ、日本漁業の主役。沿岸漁業の持続的発展が、食料自給率の向上にも、地域経済の再生にもきわめて重要だ」と強調。

 また、日本の小規模沿岸漁業は漁民同士の“共同”や“協同”を基に、世界的にみても優れた漁業資源管理を行ってきたことなども紹介しました。

 大型漁船が漁場を荒らす

 各地からの報告では、漁業の実態と漁への熱い思いが、悲喜こもごも語られました。

 岩手県漁民組合の組合長、藏徳平さんは、「わが家は代々、メヌケ(アコウダイの別名。赤魚ともいう)のはえ縄漁を受け継いできた。ところが1962〜63年ころからまったく取れなくなった。原因は大型船によるトロール漁だ。漁場を破壊してまで魚を取っていいのか。三陸でも巻き網漁が操業するようになって、イワシやサバも小さく、量も少なくなってきた」と述べ、沿岸漁業の危機的な現状を訴えました。

 北海道焼尻(やぎしり)島の漁師で、「持続的なマグロ漁を考える会」の代表呼びかけ人の高松幸彦さんも、大型船による底引き網漁がスケソウダラやホッケなどの漁業資源を破壊している現状をリアルに語り、「底引き網漁は、海の底で卵を持った魚まで根こそぎとってしまい、浅瀬で産卵に上がってきた魚を食べていたタコなどの魚種も見えなくなってしまった」と、話しました。

 また高松さんによると、北海道のマグロ漁はさらに危機的な状況で、「40年ほど前までは家からマグロが跳ねているのが見えたほど、たくさんいたが、1990年代には九州から山陰沖の巻き網漁船が増加したことで、北上するマグロが激減し、2000年に100キロ台のマグロが2本あがったきり、1本も取れなくなった」と言います。

 高松さんは「これはもう声をあげていかなければ。既存の漁業者の団体だけでは、小規模漁師の声はなかなか反映されない。“横”につながって、声を上げていこう」と、力強く呼びかけました。

 孫子の代まで豊漁を願って

 バスで、19人が大挙して参加したのは、千葉県沿岸小型漁船漁業協同組合の皆さんです。

 同漁協には、千葉県内の地域漁協に属する16船団397隻が加盟しており、限られた漁場に操業船が集中しやすいことから、漁業者間の操業調整を基本とした自主的な資源管理も取り組みの大きな柱となっています。副組合長の渡辺秀人さんは、「すべての問題を、多数決ではなく、徹底した話し合いで解決するというのが、私たちのやり方だ。本当は漁師はみな、少しでも多く魚を取りたい。しかし孫子の代まで漁が続けられるようにと願って、みんなで協力して漁場を守っている」と話しました。

 また、組合長の鈴木正男さんは、「千葉県ではこの組合があることで、巻き網漁や底引き漁などの大型船との話し合いや、地域の漁業資源保護に、本当に大きな力になっている。しかし魚は県境も国境も越えて回遊している。日本全体の持続的な漁業の発展のために、今こそ全国組織が必要だ」と強調しました。

 岩手県の三陸漁業生産組合の瀧澤英喜さんからも、小規模漁業者が声を上げたことが報告されました。岩手県では東日本大震災の津波被害で、県内の沿岸漁船600隻のうち500隻を流失するなかで、残った船や再建できた船を活用して少しでも収入が得られるよう、サケの刺し網漁の解禁を求める声が高まりました。しかし効率の良い定置網漁の権利は漁協幹部が独占しているのが実態で、県に何度要請しても、独占を追認する姿勢に終始してきました。

 瀧澤さんは、「今年1月、いよいよ岩手県漁民組合の漁民112人で、弁護士さんの協力も得て、行政訴訟も視野に入れ、県に要求書を提出した」と、報告しました。

 福島県農民連に加盟する岩子漁業生産組合の遠藤友幸さんは、福島原発事故の汚染水の海洋放出の是非が、漁民の判断に求められていることを厳しく批判。国や東電の無責任極まりない対応が続くなかで、「若い人が希望を持てる漁業にしていきたい」と復興への強い思いを語りました。

 県や魚種越えて全国組織作ろう

 司会を務めた「21世紀の水産を考える会」の山本浩一さんが、「漁業制度や資源管理など全国的に共通するいろいろな問題があるが、小規模漁業者の声は論議すらされないのが現状だ。原発問題も沿岸漁業の死活にかかわる大きな問題。こうした全国的な問題に県や魚種を越えて全国組織をつくり、声をあげていこう。夏には結成準備会を立ち上げよう」と提案すると、大きな拍手で承認されました。

 会場には、出席できなかった和歌山県のカツオ漁業者や、長崎県の「壱岐市マグロ資源を考える会」、東京都神津島の一本釣り漁業者などから、心のこもった賛同メッセージが届けられました。

 農業と漁業は食糧生産の仲間

 集会後には、とりたての海の幸を囲んで懇親会が開かれ、農民連の笹渡義夫副会長が「農業と漁業は同じ第1次産業で、国民の食糧を生産する仲間。農業も漁業も家族経営の発展なくして、地域も、持続性も守れない。これからも協力していきましょう」と、あいさつしました。


「安倍政権NO!☆0322大行動」
〜民主主義を取り戻せ!
原発、集団的自衛権、憲法、沖縄米軍基地、秘密保護法、TPP、消費税増税、社会保障、雇用・労働法制、農業・農協改革、ヘイトスピーチ
日時 3月22日(日) 午後1時〜集会 2時〜巨大請願デモ・国会大包囲
場所 日比谷野外音楽堂(大音楽堂)・国会議事堂周辺(野音集会後、請願デモと国会包囲を同時に行います)
主催 安倍政権NO! ☆0322大行動実行委員会

(新聞「農民」2015.3.9付)
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2015年3月

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