分析センターだより
ペットボトル茶は安く
時期はずれの茶が材料
農力格付けチェック
2月7、8の両日に行われた農民連青年部総会では、テレビ番組「芸能人格付けチェック」をまねた「農力格付けチェック」という特別企画が行われました。テレビ番組は、高級食材と安い食材を用意し、芸能人の舌を試して笑う、ただの娯楽番組ですが、青年部版は、農力のあふれる食材(農や食、地域や文化を豊かにする力にあふれる食材)と大量生産品や顔の見えない仕組みで作られた食材二つを用意し、背景に潜む課題、私たちが目指すべきことを考える企画になっています。今回、農民連食品分析センター監修のもと、5食材が試されましたが、ここではその一つ「緑茶」について紹介したいと思います。
緑茶は、「急須のお茶に味がそっくり」というアンケート結果をコマーシャルで流している日本コカ・コーラ(株)のペットボトル茶「綾鷹」と、京都和束町で茶農家を営む青年部部長、植田修さんのせん茶を用意しました。結果は、無事、参加者ほぼ全員が二つを見分けることができたようです。
うま味成分の多少で
さて、この二つ、科学的にはどんな違いとして検出することができるでしょう。ポストカラム誘導体化方式のアミノ酸分析計を用い、お茶の味を左右する成分の一つ、うま味成分の「グルタミン酸」と「テアニン」含有量を測定してみました。
違いはグラフのとおり一目りょう然です。ペットボトル茶は急須で入れたお茶(茶葉10グラムに430ミリリットルのお湯)に比べ、うま味成分が少ないことがわかります。もちろんお茶の成分含有量は入れ方により変わりますし、今回は味を左右する渋味、苦味成分について測定を行っていませんので、評価に課題は残りますが、それらを加味してもペットボトル茶は、頼りない結果だと言えるでしょう。
多くのペットボトル茶は、売り文句とは裏腹に、安い価格、安い時期のお茶を買いあさって製品を作っているにすぎません。その偏向した需要が、お茶の生産価格にまで影響を及ぼす一因になっていると言われています。
生産者価格に影響、収入急減
お茶にこだわるから
ペットボトル茶が人気だから、生産農家ももうかっている、と考える人も多いようです。でも現実はそうなっていません。(公社)日本茶業中央会の2014年資料によれば、ペットボトル茶の生産量は、大手メーカー参入に後押しされ、2000年頃から急増、05年に横ばいに達し、13年では253万キロリットル(年一人あたり20リットルに相当)となっています。一方、荒茶の生産者価格(全国平均)はその推移をまるで反対になぞるように急減、1999年に10キログラム当たり3万140円(荒茶)だった生産者価格は、2002年以降、1万4000円から2万円の間を横ばいに推移しています。その推移は奇妙なほどシンクロしています。
いつでもどこでも手軽にお茶が飲めるペットボトル茶。その技術開発に尽力し、生まれた製品を受け入れてきたことは、ある意味、お茶にこだわる日本人だからこそできたことだと言えます。でも、自宅にいるときぐらいはちゃんと急須でお茶を入れ、楽しむこと、そしてその時間を大切にしたいものです。
(八田)
(新聞「農民」2015.3.2付)
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