ナラシ対策
(収入減少影響緩和対策)
加入率高い北海道でも発動ムリ
販売価格が基準では
実態に合わず下支え困難
農水省が米価対策の「セーフティーネット」としてけん伝している「ナラシ対策(収入減少影響緩和対策)」。もっとも加入率の高い北海道では発動さえしそうにないという実態が明らかになってきました。
“経営の不安定さ”
空知中央農民組合に加入している岩見沢市の稲作農家、富沢修一さん(58)は22ヘクタールの水田に米や転作の小豆、白菜などを作っています。24歳で就農し、20年間で規模を3倍に拡大しました。農業の最大の問題は「経営の不安定さ」だと言います。
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富沢さん(左)と白石会長夫妻 |
「昨年は天候不良で未熟粒が多く、色彩選別ではねられる米が例年の3〜5倍に増えています。しかも価格は4分の1以下に下落。網下米にいたっては昨年の10分の1に暴落しています。10アールあたりでは2〜3万円の減収です。機械代などの支払いを済ませたら、手元に残りませんでした。本当に大変なのは今年です。米の作付けをどれだけ減らすか、みんな頭を悩ませています」。
「生産コストを基準」にしてこそ
大半は対象にならぬ
農水省が下支えとしているナラシ対策については、北海道は豊作基調であることから、大半の農家が対象にならないとみられています。「平均価格を個々の生産数量に当てはめるだけなので、計算は簡単にできますが、個々の実態に合わず、下支えになりません」。富沢さんはナラシ制度そのものに大きな矛盾があると考えています。「販売価格を基準にするのではなく、生産コストを発動条件にしない限り、この矛盾は解消されない」と同じ岩見沢市に住む農民連の白石淳一会長も話していました。
生活資金のつなぎ融資についても宮沢さんは、「審査に2カ月くらいかかり、緊急の対策にはなりません。担保も新たに必要ですが、農家はすでに農地を担保に借金をしていることが多く、借りられる人はほとんどいないのでは」と実効性に疑問を持っています。「こうした制度の問題点を、個々の農家がほとんど知らないというのが大きな問題です」と指摘します。
離農傾向とまらず
富沢さんの住む岩見沢市の北村地区では30年間で4分の3の農家が離農しました。「JA岩見沢管内では、農家戸数の2割である20ヘクタール以上の農家が、耕作地の約半分を耕作しています。今後、10年で農家が半減するとまで言われています」と話します。
「30ヘクタール以上の農地を機械で耕作すると言っても、人間がいなければ機械は動きません。逆境に負けないだけの健康がなければ農家はやっていけません」富沢さん。後継者の息子さんと、農地を守っていく決意です。
(新聞「農民」2015.1.26付)
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