白石淳一会長の開会あいさつ
(大要)
農民連大会参加の皆さん大変ご苦労さまです。2013年1月に開催された20回大会は、今回と同じように年末に総選挙が行われ、その結果民意を裏切った民主党政権が国民から見放され、これに代わって安倍政権が発足するという情勢の下で行われました。
この安倍政権が最初に行ったのは、日米首脳会議をテコに国会決議や自らの選挙公約をも投げ捨てTPP交渉参加に舵(かじ)を切ることであり、そのための安倍首相のいいわけの目玉は農業を成長産業にするとして農業の輸出・所得倍増を打ち出しました。しかし、この真のねらいは、農民連が指摘したように、TPP推進をテコに農業をも大企業のもうけの場に差し出そうとするものでした。
2013年7月にはTPPへの交渉参加を強行するとともに、2014年1月にはスイスのダボスにおいて「世界で最も企業が活動しやすい国をめざす」とし、「40年以上続いてきた減反を廃止し、民間企業が障壁なく農業に参入し、作りたい作物を、人為的コントロール抜きに作れる時代がやってくる」と演説し企業重視の姿勢を露骨に示しました。
その上、戦後の民主的諸権利を敵視する戦後農政の総決算路線を突き進み、家族農業を否定し企業や企業的経営が農業の8割を担う「農政改革」に踏み出しました。この構造づくりを推進するためにじゃまになる農協や農業委員会を解体し、農地の取得や農業生産を企業が自由に行えるようにしようとするなど暴走をつづけています。
昨年の米価が40数年前の水準まで下落し、「10ヘクタールで米を作っているが、一生懸命働いて300万円借金が増えた」「もう米作りは限界だ」などの声が渦まいています。この原因は安倍政権が、TPP推進を前提に「価格は市場で決まるもの」として米の需給と価格への国の責任を投げ捨てた結果です。
こうしたことは米だけではありません。最近バター不足が問題になっています。この原因は、円安による飼料価格の高騰や、日豪EPA(経済連携協定)、TPPなどの影響など先行き不安から牛乳の生産量が減り続けていることにあります。バターなど加工原料乳の供給地である北海道では、毎年200戸ほどの酪農家の離農がつづいています。以前であれば近隣の酪農家が離農跡地を引き継ぎ生産を維持してきましたが、経営に展望を持てない現状ではこうした対応ができなくなっているのです。
農民連はこうした安倍政権の暴走政治を許さないたたかいに全力をあげてきました。とりわけTPP交渉からの撤退を求める運動では、広がった共同の力を基礎に、様々な危機的状況を乗りこえて、4年あまりにわたり合意を阻止してきました。この運動を前進させる上でみなさんの奮闘が全国各地で展開されたことが大きな力になっていることをお互いの確信にしたいと思います。
米価暴落での農民連の果たした役割も大きなものがあります。農民連は米価下落が確定的になった昨年春の時点でいち早く米価下落の緊急対策と抜本的な米対策を要求して運動を進めてきました。農民連の運動が契機になり北海道・東北6県・新潟の知事が対策を要求したのをはじめ、各地の自治体からも対策を求める意見書があげられるなど、「米価下落に対策をとれ」との声は大きな世論となり、総選挙でも大きな争点になりました。
総選挙では民意を反映しない選挙制度に助けられ自公が議席の上では多数を占めました。安倍首相は数を力に暴走政治をつづけることを明言しています。しかし、自民党が今回獲得した比例の得票率は33%であり国民多数の支持を得たものでないことは明白です。民意を無視することは許されません。
一方、安倍政権と正面から対決してきた日本共産党が8議席から21議席へと大きく躍進しました。この躍進の原動力は、安倍暴走政治に対する怒りであり、「国民が主人公」の政治をめざす日本共産党への期待の高まりです。農民連と共同してたたかってきた日本共産党の躍進は、農村での要求実現と政治の転換のうえでも大きな展望を切り開くものになりました。
私たち農民連は、国民要求を実現するために、一致点での共同を大事にし、この共同の“核”を担って奮闘する決意です。全国のみなさんの奮闘を心から呼びかけ開会のあいさつとします。
(新聞「農民」2015.1.26付)
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