「農民」記事データベース20150105-1148-06

高崎市の認定農業者の会

高崎(群馬)に新名物“梅餃子”

地域活性化とまちおこしの取り組み

 TPP推進など農業つぶしの動きが強まるなか、地域活性化とまちおこしが求められます。群馬県高崎市で、「特産の梅を生かした名物を作るぞ!」と奮闘しながら、仲間の輪を広げている取り組みを紹介します。


高崎特産の梅が“主役”
地元農産物をふんだんに使用

 「これはうまい」高崎市長大喜び

画像  「高崎名物『梅餃子』」は地場産の食材をたっぷり使った餡(あん)の中に、特産の練り梅とカリカリ梅をほどよく練りこんで、うまみと酸味をバランスよく仕上げています。さっぱりとして、タレなしで何個でも食べられ、試食会に参加した富岡賢治市長も「これはうまい」と大喜びした逸品です。

 取り組みの中心となっているのは高崎市の認定農業者の会が立ち上げた勉強会「高崎市農業者先端技術情報化研究会(略称NSJK)」です。

 NSJKの会長、塚越正敏さん(64)はシクラメンやラベンダー、カーネーションの鉢植えや野菜の苗を出荷しています。「2012年の春に研究会を立ち上げたのは、『6次産業化』の戦略を勉強するためでした。その中で、『実際に商品開発をしてみよう』となったのが梅餃子作りのきっかけです」と話します。

 県農民連会長も皮の小麦を提供

 高崎市は全国2位の梅の生産地。梅樹の本数は日本一で、梅酒会社チョーヤなどにも出荷していました。「名物を作ろうと考えたときに、梅があると気づきました。ギョーザならばなんとかできるのでは、と考え、ホテルナガイの料理長に相談し、夏に試作をしてみました。材料は高崎産か県内産の農産物を使っています。皮は木村一彦さん(群馬農民連会長)の小麦『きぬの波』を50%使用しています。いまはキャベツを作ってくれないかと、仲間にお願いをしているところです。皮も高崎産100%にしたいです。いろいろ必要なものが出てくると、研究会の仲間も増えてきました」と語ります。

 企画段階から協力している、ホテルナガイの料理長、井原透貴さん(47)は宇都宮の出身です。もともと勉強会を同ホテルで開催していたのが縁で、相談を受けました。「何度も足を運んでいただき、熱意にほだされて協力させていただきました。少しでも力になれればと思いましたが、試行錯誤を繰り返しました。おいしい梅なので、梅が主役になるようなギョーザにしようと工夫しました」と話します。「塩分があるので、具の野菜から水分が出るので、搾らなければいけないのが大変でした」と苦労を話してくれました。同ホテルのレストランでは、梅餃子を定番メニューとして提供しています。少しずつリピーターが増え、評判になりつつあります。

農家元気に農民連会員も増える

 肝心な梅と塩にとてもこだわり

 勉強会のメンバー、湯浅直樹さん(56)は就農して21年になります。100年以上の歴史ある梅農家で、1・3ヘクタールに約260本の梅を無農薬で栽培しています。「いま、高崎では梅農家がどんどんやめています。原発事故の影響で、2年間チョーヤへの出荷は県全体でゼロでした。うちの売り上げも半減しました」と厳しい状況に置かれています。

 こうしたなかで湯浅さんは、「健康・環境・安全」にこだわり、電気自動車を導入するなど化石燃料に頼らないくらしを実践。エネルギーの自給では、18年前から太陽光発電や薪暖房、バイモス(梅を燃す)ボイラーを導入するなど取り組みを進め、いまではエネルギー自給率1000%を達成しています。本業の梅の栽培でも、すべて無農薬栽培で、2014年には加工品を含めJAS有機の認証を取得しました。「『いい塩梅』を突き詰めると梅と塩が肝心なのです。塩にもこだわって、使っている塩の製塩所には直接足を運び選んでいます」と並々ならぬこだわりを語っています。梅餃子作りを「高崎の梅を広げるいい機会」と参加し、試作時の梅の提供など協力をしています。

 梅餃子作りを通じて、新しく農民連に加わった仲間もいます。千吉良(ちぎら)機工株式会社の代表取締役、千吉良勝美さんです。千吉良さんの紹介で、餃子の生産メーカー、金星食品(太田市)とつながりができました。「すでに亡くなってしまった方がつないでくれた縁で、農民連と出会い加入しました。もともと加工を取り入れれば、より消費者の食に近くなれると考えていました」と千吉良さん。「農民連は、おいしいものがどこにあるかわかっているので、展開できることを提案し、群馬の元気を発信していきたいです」と今後の活動を見据えています。

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梅餃子作りに取り組むみなさん(左から塚越さん、湯浅さん、木村さん、千吉良さん)

 ギョーザ作りで交流も活発に

 梅餃子の生産に協力しているのが金星食品です。「大きいメーカーとは競争できないので、お客さんのニーズに合わせて作るのが方針です」と社長の三俣達五朗さん。窓口となって奔走した加藤登美男営業部長(埼玉県農民連会員)は「初めは絶対無理だと思いました。でも、木村さんの人柄や塚越さんの熱意に打たれ、社長にも『やってみるか』と言ってもらえたので、実現させることができました。ギョーザだからこそ、皮に米粉を使うなど、バリエーションを増やせる可能性があります。生産者もうるおい、食べた人も元気になれるご当地ギョーザが作れたらいいですね」と地域おこしのためのギョーザを活用するために日々走り回っています。

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金星食品の工場(左は三俣社長)

 「もともと認定農業者の会自体になかなか出てこない農家が多かったのですが、『農業の中の異業種交流会として、この勉強会を大切にしよう』とがんばってきました。最近では、よその分野のことも考えて一緒に取り組もう、という空気ができてきて手ごたえを感じています」と塚越さん。「第2弾は梅シュウマイを計画中です。安心、安全で安くておいしいものを作り、地産地消を進めていきたい」とまだまだアイデアは尽きません。

 木村会長も「まさに『餃子』の字のように食と交わることで人と人がつながっていきました」と話します。農業以外の人まで含めた仲間の輪が広がり、農家に活力が出てきています。また、農民連の会員も読者も増えたように、運動にも大きな力になっています。

 また、千吉良さん、金星食品と群馬農民連が協力して、「なっからうんめぇぎょうざ」など、群馬県産の食材のみ使用したおいしいギョーザを開発、販売しています。お問い合わせは群馬農民連 TEL 027(288)8633まで。

(新聞「農民」2015.1.5付)
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2015年1月

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