「農民」記事データベース20141124-1143-07

電力会社が接続手続きを保留

再エネ促進の観点で議論すべき

福島県農民連 佐々木健洋


 2014年9月、九州電力が「再生可能エネルギーによる発電設備の接続申し込みを数カ月間にわたって管内全域で保留する」ことを発表しました。これは、太陽光で発電を行っても、電力会社がその発電電力を引き受けず、事実上、買い取らないことを意味します。この発表には、東北電力や四国電力、北海道電力など他の電力会社も追随しています。

 国が政策の一環として検討を

 各電力会社は今回の発表の理由を「電力の需給バランスが崩れる可能性が生じたため」と説明しています。電力は、供給と需要をリアルタイムで一致させていかねばなりません。しかし、太陽光発電の容量が急増すると、電気の需要が少ない時期の日中に、必要な電力量を超える可能性があります。

 このように電力の需要が供給を超えると、停電などの事故が起きる可能性があるため、供給の調整が難しい太陽光発電からの発電量の引き受けを一時停止するというのが、電力会社の言い分です。九州電力は、「安定供給を維持しながら再生可能エネルギーを最大限導入できるように、全力を尽くす方針」を発表し、数カ月かけて検討するとしています。

 こうした電力会社の説明を聞く限り、一見その通りに思われます。しかし、これは今後、日本がどれくらいの再生可能エネルギーを導入していけるのか、その可能量の検討にかかわる、非常に重大な問題です。国がエネルギー政策の一環として検討すべきものであり、電力会社のみで解決すべき問題ではありません。

 安倍首相は原発をベースロード電源と位置づけ、再稼働に前のめりの政策を進めています。この買い取り保留は「原発再稼働のために、送電線の容量に余力を残したい」という思いが透けて見えます。

 植民地発電ではなく地域主役に

 9月30日、経済産業省の下に、この接続問題解決のための有識者による検討委員会の設置が決まりました。この委員会の設置は歓迎されますが、全ての情報を公開し、再生可能エネルギーの普及を促進する観点で議論が進められることが重要です。

 農村には再生可能エネルギーのポテンシャル(潜在的可能性)が多く、農民、市民がこれから事業に着手する地域も少なくありません。大手資本は情報と資金力を最大限生かし、本来地域で得られるはずの売電収入を吸い上げてしまう「植民地的発電所」設置に躍起になってきました。ドイツやデンマークのように、地域住民が主役の再生可能エネルギーに切り替えていくことを、今回の買取保留問題を契機に訴えていく必要があります。

 人口減少社会を食い止めるために「地方創生」を言うのであれば、農林漁業、再生可能エネルギーを普及促進し雇用を生み出すことが最も重要です。

(新聞「農民」2014.11.24付)
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2014年11月

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