「農民」記事データベース20141124-1143-06

共同発電所全国フォーラム

市民・地域が主体の
自然エネルギー広げよう

石川県金沢市

関連/農協を設立して電力自給に挑戦


 市民や地域が主体となって自然エネルギーの普及をすすめようという「市民・地域共同発電所全国フォーラム」が、10月24、25の両日、石川県金沢市で開かれ、全国から市民や関係者が集いました。

 1日目の全体会では、元立命館大学教授の和田武さんが基調講演しました。和田さんは、数多くのデータや事例を紹介しながら、「小規模分散型の自然エネルギーは市民・地域主導の取り組みに適している。とくに農山漁村はあらゆる自然エネルギーの資源に恵まれている」と強調。さらに、「こうした市民主導の自然エネルギーの数量的拡大は、市民と地域のかかわり方を変え、地域社会に自立的発展をもたらす。そしてより民主的で持続可能な社会への発展につながっていく」と述べ、「市民・地域が主体になって自然エネルギーを普及していこう」と呼びかけました。

 また、九州電力など4つの電力会社が再エネ電力の接続手続きを保留している問題について、「原発は電力不足を理由に再稼働しようとしているのに、再エネ電力は余っているから買い取りしないという電力会社の姿勢はおかしい」と厳しく批判。

 (1)自然エネルギー資源の豊富な九州や北海道と、電力の消費地である大都市を抱える東京電力などとの送配電網の拡充・運用改善、(2)メガソーラー(大規模太陽光発電)などが、ずさんな事業計画で実際には建設もしないまま認定容量の枠をひとり占めしている問題を解決すること、(3)原発が稼働していないことから現在は未利用となっている揚水発電(夜間の余剰電力でダムの水をくみ上げ、その水を昼間の発電に利用する水力発電方式)の有効活用など、自然エネルギーの本格普及に向けて取るべき方策はまだたくさんあることを指摘しました。

 2日目は、共同発電所のつくりかた、木質バイオマスなど4つのテーマで分科会を開きました。


全国フォーラムでの報告から

農協を設立して電力自給に挑戦

岐阜県郡上市 石徹白(いとしろ)集落
NPO法人地域再生機構 野村 典博さん

 岐阜県郡上市石徹白(いとしろ)地区は岐阜県と石川県の県境、白山南麓に位置する、小さな集落です。昭和30年代までは210戸、1200人余りの住民が暮らしていましたが、この50年で人口が4分の1に減り、現在は100世帯、人口250人です。

 石徹白小学校の児童数も11人に減り、存続の危機にたたされました。そこで、「30年後も石徹白小学校を残そう!」というのが、地域づくりの合言葉になり、特産品の開発や定住者の促進事業など、多彩な地域づくりが行われています。こうした取り組みもあって、2011年以降、5世帯11人が集落外から移住し、石徹白小学校の児童の半数はその移住者で占められるまでになってきました。

 全世帯が組合員利益も地域に

 小水力発電の取り組みは、こうした地域づくりの一環として始まりました。まず、2007年にマイクロ水力発電機を地域内の水路に導入し、水がエネルギーになるということを集落の人に知ってもらい、09年にはもう少し本格的ならせん式の水車を、さらに10から11年にかけて3メートルの上掛け水車を設置して、農産物加工所の電気をまかなうようになりました。

 そしていよいよ12年から、事業用の小水力発電所の建設を目指して準備を始め、14年4月に電力事業をするための「石徹白農業用水農業協同組合」を設立。15年に岐阜県と郡上市による68キロワットの発電所が、16年には発電農協による103キロワットの発電所が完成する予定です。つまり合計170キロワット以上の発電が実現し、電気の村内自給が実現することになります。

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石徹白集落の水路を利用したらせん式水車(左)と上掛け水車(右)

 しかし、なぜ発電事業の主体が農協なのか? じつは株式会社でも何でもよかったのですが、集落の全員が参加する仕組みにしたかったからです。全世帯が組合員となることで合意するまでには時間もかかりましたが、そうやって農協を立ち上げることによって、「自分たちで組織をつくり、リスクも負って、利益も地域に還元したい」という集落の意思を明確にすることができたのです。売電の収益はすべて、特産品や新規営農への支援といった地域の農業振興策の原資になります。

 農協を地域の自治の拠点に

 石徹白でこうした取り組みが実現できたのは、1つ目には、すでに地域内にマイクロ水力発電という「現物」があり、“自然エネルギーは地域のためになる”という合意形成の土台ができていたこと、2つ目には、地域内に発電所の建設から維持管理までできる専門知識をもった技術者が育っていたこと、3つ目には、地域内と、地域外の情報や知識をつなぐNPOなどのネットワーク(私もその一人です)があったこと、です。

 そして大切にしているのが、この取り組みが地域の自治につながっていくということ。自分たちの暮らしは自分たちでつくる――農協がその自治の拠点として、村役場の役割を果たしていけると考えています。

(新聞「農民」2014.11.24付)
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2014年11月

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