〈モザンビークで進むプロサバンナ開発事業〉
ODA投入 小農民から農地収奪
巨大商社の進出を手厚く援助
日 本
途上国などへの資金・技術協力を行う日本の政府開発援助(ODA)のもと、アフリカ大陸南東部に位置するモザンビーク共和国で進められている「日本・ブラジル・モザンビーク三角協力によるアフリカ熱帯サバンナ農業開発事業(略称プロサバンナ)」のあり方が問われています。
日本とブラジル連携して開発
プロサバンナは、モザンビーク北部の3つの州にまたがる1400万ヘクタール(日本の耕地面積の約3倍)を対象に、2009年から行われている巨大開発事業で、1970年代に日本がブラジルで行った大規模農業開発(セラード開発)を“成功モデル”として、日本とブラジルが連携して実施しようという開発事業です。
「ナカラ回廊」と呼ばれるこの地域は、ブラジルのセラード地域に似た熱帯サバンナ(雨季と乾季がはっきり分かれた乾燥気候)で、“広大な未利用農地”が地元小農民に使われることなく“残っている”ため、ブラジルから技術を移転し、農業投資を導入することで、同地域を輸出向けの大豆や穀物の一大生産地へと転換しようというのです。
日本政府はODA予算を使って大規模農業への転換を支援するほか、港湾や輸送網などを整備。その一方で伊藤忠などの巨大商社が大豆やゴマなどの生産物を買い受け、輸出するという体制づくりが進められています。
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海外投資企業により収奪された土地。アカシアが植林されている。奥の山のほうまで土地が取られたという |
少しの保証金で小農民追い出し
しかし、モザンビークでも温暖な気候で、土壌も肥沃(ひよく)なこの地域には、すでに多くの小農民が暮らしています。自給自足を基本とし、同時に南部の食糧需要も支えるという小農民による農業が営まれているのです。このため、プロサバンナ事業の開始後、土地・農地が小農民の承諾なくモザンビーク国外の企業の所有となり、わずかな保証金で小農民が農地から追い出されるといった「農地収奪」が多発しています。しかし日本政府からは、プロサバンナ事業の予算や内容、土地収奪の実態などの情報公開はほとんど行われていません。
地域・農業を破壊し大規模化を狙うもの
ビア・カンペシーナ 声明出し激しく非難
一方、こうした農地収奪に対抗する小農民の運動も広がっています。2200もの農民団体で組織され、国際的農民組織ビア・カンペシーナにも加盟する「モザンビーク全国農民連合(UNAC)」は、プロサバンナ事業を「地域・農村コミュニティーを破壊し、モノカルチャー(大規模単一栽培)を推進するもの」と強く非難する声明を2012年10月に発表。昨年4月には3カ国の首脳あてに「プロサバンナ事業の緊急停止と抜本的見直し」を求める公開書簡を発表し、反対運動を強めています。
日本国内でも高まる疑問の声
日本国内でもプロサバンナ事業への疑問の声が高まっています。アフリカ日本協議会、日本国際ボランティアセンター(JVC)、オックスファム・ジャパンなどは2013年と今年の7〜8月の2回にわたって現地調査に入り、NGOとしての提言をまとめ、10月29日にはその報告会が国会内で開かれました。その「提言」では、情報公開の改善などのほか、小農民支援のありかたを、「生産する作物などを小農民自身が選択し、決断する権利を尊重し、農民の主権に根ざ」したものにするよう、事業を抜本的に見直すことを求めています。
集会で報告された農地収奪の実例
ナカラ回廊のある村では、大豆の大規模農場建設のため、数百家族が移転先の補償もないまま土地を追われた。このうち5家族を受け入れた近隣のA村でも水源地がこの企業の所有となってしまったため、8キロも離れた川へ水くみに行かなければならなくなった。
さらにA村では、ある日突然「この企業の米を盗んだ」と2人が逮捕された。村人たちは「その米は盗んだ米でなく自分で生産した米だ」として釈放を要求しているが、1人はいまだに刑務所にいる。
(新聞「農民」2014.11.17付)
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