茨城県西農民センター
税金相談や東電賠償請求で
悩む農家の相談にのり仲間ふやす
税務調査・確定申告呼び出しに
“農民センターに相談してよかった”
3万枚超えるビラを折り込み
税務調査は昨年と大きく様変わりしています。農家を訪問しての調査より、文書で呼び出しての調査が増えています。文書で呼び出せば、事前通知の必要がなく税務署内での調査が行えるとのねらいが税務署にはあります。加えて、今年から記帳の義務化、消費税の複数税率化(5%、8%)など税金を巡る状況が大きく変わり、農家は対応に苦慮しています。
また東電福島原発事故による風評被害の損害賠償請求ができることを知らない農家もまだ多数存在しています。これらの現状を踏まえて「税金」と「東電賠償請求」を会員拡大の柱にすえ、春の仲間づくりに3万6000枚、10月上旬に3万2500枚のビラを新聞に折り込み、事務所に来る会員にもビラを渡し、知り合いに届けるよう頼んでいます。10月に損害賠償請求で加入した農家は、折り込まれたビラをしっかりと持って相談に来ました。
税金の要求で多くの加入が
夏以降の税務調査の相談が会員外から5件寄せられています。
加入した農家Aさんは、10月16日に税務調査を受け、その日のうちに、物件の留め置きを根拠にした税務署員に資料を渡し、反面調査にも同意してしまいました。どうしたらよいか悩みに悩んだ末、会員に相談して農民センターに訪ねてきました。
農民センターとAさんは翌日税務署に行き、留め置かれていた資料を取り戻し、申告内容を見直すことにしました。Aさんはなぜ税務調査の対象にされたのかを知るために、税務署で保有する「保有個人情報」(調査手続チェックシート〈事前通知用、本表〉、調査経過記録書、着眼事項等チェックシート)の開示請求を行いました。Aさんが同意した反面調査が27日に取引先に行われることがわかり、Aさんと農民センターは、税務署員の上司である統括官と総務課長に抗議し反面調査を中止するよう求め、その結果、取引先から反面調査は中止になったと連絡がありました。
違法な呼び出しきっぱり拒否
農家Bさんは、税務署からの文書「所得税の確定申告について」で日時、場所を指定され呼び出されていました。資料をそろえて指定された日に税務署に行こうとしましたが、以前に農民センター会員から税務調査の取り組みを聞いていたので思いとどまり、会員に相談し農民センターを訪ねてきました。
Bさんに送られてきたその文書には、「調査をいたします」と書かれています。通常、税務調査は任意調査であり、日時や場所を指定しての呼び出しは任意調査の範囲を超えています。さらに事前通知で伝えなければならない法律事項を意図的に回避する行為であり、二重に違法性があります。
税務署に抗議し見解を求めたところ、「呼び出し文書は、行政指導文書でも行政処分の文書でもない」と回答してきました。Bさんは「呼び出し文書の根拠が示せないなら調査の根拠はなくなった。根拠のない事柄には対応する必要はない」と税務署に伝えました。AさんとBさんは「税務調査が任意の調査だと税務署員は教えてくれなかった」「農民センターに相談してよかった」と話しています。
賠償勝ち取り知り合い誘う
福島原発事故による風評被害の損害賠償請求では、これまで400件を超える請求を受け付け、350件の合意、8億2000万円を超える賠償金が農家に支払われています。
「請求に住民票の添付がないから審査を行わない」という東京電力に対し、9月25日、農民連関東ブロック協議会で交渉を持ち、10月初旬「これまで通り住民票の添付がなくても賠償に応じる」と回答させました。これまでの取り組みで賠償金を受け取った会員は知り合いを次々に会員に誘い、今年に入って6戸が加入し、税金の要求で加入した人も賠償請求に取り組んでいます。
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「住民票の添付がなくても賠償請求に応じる」と東電に認めさせた関東ブロックの交渉=9月25日 |
農民センターでは相談を受けた会員の立場にたって対応し、農民「県西版」で毎週ニュースにして会員に届けています。農家の要求をしっかりとつかみ、実利が得られるような援助に努めてきました。それらの取り組みが会員を通じて会員外の農家に伝わっていることが、会員拡大に結びついていると思います。税金の要求の加入者が損害賠償請求の要求に、損害賠償請求の加入者が税金の要求に結びつくなど取り組みは広がっています。
(茨城県西農民センター 初見安男)
(新聞「農民」2014.11.17付)
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