「農民」記事データベース20141110-1141-01

フォーラム「復興と漁業の展望を探る」

漁民の全国ネットワーク結成を

岩手県漁民組合


漁民が広く手を結び
資源と漁業、暮らしを守ろう

 岩手県漁民組合は10月18日、山田町でフォーラム「復興と漁業の展望を探る」を開き、県内各地をはじめ13都県から漁業関係者ら80人余が参加しました。協賛は、21世紀の水産を考える会、東日本大震災津波救援・復興岩手県民会議(県民会議)、全国食健連、農民連、岩手県農民連です。

 漁業振興に背を向ける安倍政権

 岩手県漁民組合の藏徳平組合長が「今回のフォーラムを漁業者の要求実現と団結を強める実りある場にしましょう」と主催者あいさつしました。

 来賓として、県民会議の東幹夫代表世話人は、漁港や漁船など三陸漁業全般の被災・復興状況を詳細に語り、更なる復興に向けた取り組みへの期待の言葉を述べました。

 日本共産党の紙智子参院議員(党農林・漁民局長)は、「地域創生」といいながら、農林漁業の振興に背を向ける安倍政権を批判。震災からの復興と農漁民が安心して生活できるよう政治を変える必要性を述べ、「国民の声が通る政治をめざして私もがんばります」と決意表明しました。

 固定式刺網漁の許可を求める申請書提出の代理人を務める澤藤統一郎弁護士から「嘉永の三閉伊(さんへいい)一揆に負けずに現代の浜の一揆を押し出しましょう。私も、勝利を手にするまで、皆様と一緒に隊列を組んで歩き続ける覚悟です」との力強い激励メッセージが寄せられました。

漁業関係者が共同し運動の発展を

 漁業者の連携で日本漁業再生を

 北日本漁業経済学会会長で茨城大学人文学部の客員研究員を務める二平章さんが基調報告。初めに、FAO(国連食糧農業機関)の戦略目標((1)食糧の安全保障(2)持続的な発展(3)環境の保全)を紹介し、1998年にイタリア・ローマのFAO水産局を訪れ、「この3つの戦略目標を聞いて、海岸埋め立て、河口堰(ぜき)・ダム建設などに突き進む日本政府の農漁業政策に欠落しているものだと感じた」と強調しました。

 日本政府の農漁業政策が「地方消滅」という事態を招き、安倍政権のいう「地方創生論」は「絵に描いた餅になりかねない」と批判しました。

 一方で、徳島県の牟岐(むぎ)東漁業協同組合の大久保鶴夫組合長の理念「協同こそ力・徹底した協同組合思想」に触れ、「地域を超えた沿岸漁業者の連携で日本漁業の再生をめざそう」と訴えました。

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フォーラムの前に被災・復興の様子を視察しました

 最後に「県内、県外をまたぐ『沿岸漁業者連絡組織』をつくり、地域漁業、家族漁業の持続のため、要求をとりまとめて国や海外組織に働きかけること、積極的な提案で漁協組織と共同・協力し、漁協運動の発展に寄与すること」を呼びかけました。

 次世代が漁業を続けられるよう

 漁業者からの報告では、千葉県沿岸小型漁業協同組合の鈴木正男組合長が、沖合底曳き網や大中型まき網と漁場を住み分けることによって、資源と漁場を守る努力をしてきたことを紹介しました。

 しかし、「組合設立当初からみると、季節に応じて回遊してくるカツオ、マグロ、スルメイカ、サバなどが少なくなり、資源の減少を食い止めることが必要だ」と問題点を指摘。「今後、沿岸漁民が連絡を取り合い、協議し、連携し合いながら、漁業施策の転換を求め、全国の沿岸漁民の声を発信し、全国的な運動を巻き起したい」と語りました。

 福島・浜通り農民連・岩子漁業生産組合の遠藤友幸組合長(相馬市)は、震災後、さまざまな漁業施設が復興に向けて動き出している一方、原発事故による汚染水の問題の重大性を指摘。汚染水の海への放出について、判断が漁業者に任されていることを批判し、「漁民の生活を補償し、次世代が漁業を続けられるようにしてほしい」と切実に訴えました。

 岩手県の三陸漁業生産組合の瀧澤英喜組合長(県漁民組合副組合長)は、震災後、壊滅的状況にありながらも1カ月後には操業を再開し、独自に漁具や製氷機を確保し、みんなで支え合い、励まし合いながら、地域漁業の早急な生産回復をめざして生産組合を立ち上げたと報告。

 また、最新の冷凍技術を活用して、出来たての郷土料理、漁師料理を惣菜で消費者に届ける体制を確立したことを報告しました。

 さらに、IT技術を活用し、沖での水揚げや調理風景をインターネットでライブ配信するなど、産地を身近に感じてもらう努力を紹介しました。

 静岡県定置網漁業協会顧問で21世紀の水産を考える会の山本浩一代表は、漁業協同組合の役割について、「漁業者による協同組織であり、漁村地域で地域経済や社会活動を支える重要な役割を担っており、組合員のために販売、購買、信用、共済等の事業を行っている」と説明。また、「漁業権の管理や組合員に対する指導を通じ、水産資源の適切な利用と管理についても主体的な役割を果たしている」と述べました。

 さらに、今後の漁協のあり方として、「組合員を主人公にした民主的運営が求められる」とし、「国民に安全で安価で新鮮な魚を供給し、日本の漁業生産の存続、国際化に対応した水産業への改革が期待される」と語りました。

 海に働く労働者漁業の主人公

 フロアからの発言では、参加者から漁民のネットワーク構築への期待の言葉が相次いで語られました。

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会場からも全国ネット結成への期待が語られました

 最後に、「私たちは、沿岸漁民、海に働く労働者が日本の漁業の主人公となるために、互いに協力、援助しあう全国組織の結成を心から呼びかけます。本日のフォーラムを契機に、自らの組織を立ち上げるために奮闘されることを強く訴えます」とする、全国の沿岸漁民、漁協、漁業労働者のみなさんへのアピールを全員で確認して、閉会しました。

(新聞「農民」2014.11.10付)
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2014年11月

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