「農民」記事データベース20141103-1140-11

韓国

カルタヘナ議定書第7回締約国会議
MOP7に参加して
(上)


GM生物の開発に抗議

画像  遺伝子組み換え(GM)生物による損害の補償などを定めるカルタヘナ議定書の第7回締約国会議(MOP7)が9月29日から10月3日まで韓国北西部のピョンチャン(平昌)で行われました。国際的農民組織ビア・カンペシーナ(LVC)は、MOP7に合わせて、GM生物の開発に抗議し、生物多様性、在来種子を守る運動を交流し、強める行動に取り組み、各国から集まりました。農民連も9月30日から10月3日まで代表6人が参加し、行動に合流しました。

 9月30日にピョンチャンに到着した農民連は、10月1日に行われた韓国女性農民会(KWPA)がMOP7の会場で主催した、GM生物の開発を進める農村開発庁を批判する記者会見から合流。農村開発庁が開発したGM蚕やメダカが展示されたことによるものです。

 1日には国際シンポジウム、2日の午前中は、LVC加盟組織による種子とアグロエコロジーについてのアジア戦略会議を行いました。各国の遺伝子組み換え技術の開発の状況とそれに抗する運動、在来種種子を守る取り組みを交流しました。

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国際シンポジウムで発言する齋藤さん(右から3人目)

 合成生物学とアグロエコロジー

 国際シンポで基調報告をした国際NGO・ETCグループのネス・ダノさん(フィリピン)は、最近問題になっている合成生物学について講演しました。

 従来の遺伝子組み換え技術は、生物から遺伝子を取り出し、他の生物に組み込むことですが、合成生物学は、人工的に遺伝子を作り出して、それを他の生物に組み込むものです。これでは工場で生物がつくられることになり、農家がいなくても作物を作ることができ、農家そのものが不要になってしまうことを意味します。

 アジア戦略会議の基調報告では、アメリカ・アトランティック大学のドリン・スタビンスキー教授がアグロエコロジーの意義を解明しました。

 アグロエコロジーの一つの側面は、化学肥料や農薬などの投下物に頼っていた従来の農法と異なり、土地の有機物を増やし、微生物の活動を活発化させることで土壌が豊かになり、生態系と生物多様性も豊かになるという土壌からみた点です。

 二つめは、工業的な農業に対抗して、小農民が主導し、お互いに学び合いながら政策づくりに参加し、女性が中心的な役割を果たすという政策面です。

 スタビンスキー教授は「この2つの側面を推し進めることで、食糧主権の考え方につながる」と述べました。

 各国のGM作物の現状、反対運動を交流

 両会議では、各国のGM作物の現状や多国籍企業の支配に抗する取り組みを交流しました。

 ブラジル・小農民運動(MPA)のマルシアーノ・シウバさんは、はじめにブラジルでのGM開発の現状を説明。本来は自然豊かで生物多様性に富むブラジルで、近年、モノカルチャー(単一栽培)化によって、小農民からの土地取り上げで農地の大規模化が進み、自然破壊が起きていることを告発しました。

 政府が大豆、トウモロコシ、綿花などのGM開発を進め、種子の多国籍企業による支配が起きている現状を示しました。

 これに対し、小規模農民が長年、取り組んできた生態系にやさしい農業、地域レベルでの在来種子を守り、栽培する運動について語りました。

 タイ貧困者連合のバラミー・チャイヤラトさんは、タイ国内では種子を多国籍企業に依存しなければならず、大豆、トウモロコシなどは自家採取できないこと、現在の軍部による支配下で、多国籍企業が自由貿易協定を結ぶよう政府に働きかけていることが語られました。

 民主主義が制限されたもとで、在来品種の保護に圧力をかける多国籍企業に対し、反対の声をあげるのが困難だという問題点を述べました。

 台湾の農村陣線のチェン・チェンタイさんは、消費者と農家の交流を通じて種子の保全や有機農業が見直されていることを紹介しました。

 KWPAのカン・スンヘさんは、伝統種子を守る運動の歩みを振り返り、2007年から各地の種子調査活動が本格的に始まり、1会員1種子を守る運動に発展。「種子に対する権利を守り、食の安全を守る取り組みを、消費者とも協力しながら進め、種子の問題は、農民だけの問題でなく、国民全体の問題だと認識するようになった」と述べました。

 バングラデシュのバドルル・アラムさんは、GMOが国内で脅威になっている問題点を指摘し、「緑の革命で、ハイブリッド種子を使って生産力が高まり、飢餓がなくなると言われてきたが、化学肥料・農薬の大量使用で肥沃な土壌を失い、農業がコストのかかるものになってしまった」と強調しました。

 近年では遺伝子組み換えのBtナスが問題になっており、高コストで多くの農家が負担を強いられ、生活が苦しくなっている問題とともに、「『開発』の名の下に土地から農民が追い出され、国内農業が単一栽培に近い状況に追い込まれている」と語りました。

 一方で、農民の知識を生かしたアグロエコロジーと在来種を守る取り組みを対案として提示し、それが前進していることも紹介しました。

 ビア・カンペシーナ国際調整委員のユン・グンスンさん(韓国)は、伝統種子を集め、保存・交換する運動をアジアで行うことの重要性を語り、世界各国・地域での取り組みを紹介しながら、「アジアでも種子の交換活動を強化する必要がある」と述べました。

生物多様性・在来種守る取り組み交流

 反動農政と対決農業を守る運動
  農民連報告

 農民連は、国際シンポジウムで齋藤敏之常任委員が発言。歴代政府の農政とのたたかいと国内農業を守る運動を振り返り、「『種子』は進化のタイムカプセルです。『種子』の多様性を私たち農民が守ることは、人類生存のための仕事だと確信します」と訴えました。

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遺伝子組み換え作物の簡易検査を行う八田所長(左)

 また、戦略会議では、女性部の藤原麻子さんが、在来種子を守る取り組みを紹介し、分析センターの八田純人所長は、GMナタネの自生調査を報告。休憩時間には、トウモロコシを使った簡易検査を披露しました。

(つづく)

(新聞「農民」2014.11.3付)
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2014年11月

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