米価大暴落
緊急対談
新婦人会長 笠井貴美代さん
農民連会長 白石 淳一さん
農家に重くのしかかる米価大暴落は、消費者にとっても大きな問題です。新日本婦人の会の笠井貴美代会長と農民連の白石淳一会長が対談し、その問題点と打開の方向、出番となっている産直運動の展望を語り合いました。
米作りができない低米価
いまこそ産直運動の出番
楽しく喜びにあふれる秋が…
笠井 今、収穫祭や豊年祭りなど、新婦人と農民連のみなさんとの交流が各地で盛んに行われています。本来なら、楽しく喜びにあふれた秋のはずですが、米価が大暴落しています。
白石 大きな要因は2つあります。一つは、政府が米の過剰を放置してきたこと。もう一つは、安倍内閣が推進する「農政改革」によって、「減反」の廃止など、政府が米の需給管理を放棄したことです。私たちは、過剰の米を政府が買い入れ、さらに米の価格と流通の安定に責任をもつよう、たびたび要請してきましたが、「米の価格は市場で決まる」と頑なに拒否しています。対策に踏み出せば、市場原理主義を前提にしたアベノミクス「農政改革」の非を認めてしまうことになるからです。
笠井 お米は主食です。それもコントロールできない安倍政権はそれだけでもノックアウトに値すると思います。
白石 今年の米価は、40数年前に逆戻りしたことになります。ちょうど私が農業を始めたときです。当時の生産費は60キロあたり6500円台でしたが、今では、1万6000円です。さらに燃料や肥料代、電気代も上がっていますから再生産不可能な水準なのです。
水よりも安い主食でいいのか
笠井 農家を見殺しにするのかと言いたくなりますね。スーパーでは、ほかのものはみな値段が上がっているのに、新米だけが5キロ1380円という安値で売られていることに心が痛みます。
白石 米の概算金をペットボトル500ミリリットルに換算すると、8000円のお米は54円。一番高い魚沼コシヒカリでさえ95円です。
笠井 新聞「農民」で報道していましたが、アメリカでさえ、農産物価格が暴落したときに、政府が支える仕組みがあるのに。
白石 政府は、価格が暴落してもセーフティーネットがあるから大丈夫だと言っています。「ナラシ」といって、米の価格が下がった場合に数年の平均価格との差の9割を補てんするという制度です。しかし、掛け金が高いために加入者は農家の1割にも満たずカバーできません。
笠井 本来であれば、生産にかかったコストが補償されるべきです。
主食を守る国民的な共同を
米を守る運動で産直運動が前進
白石 米の過剰で、もう一つの大問題は、ミニマムアクセス米です。年間77万トンも外国から輸入しています。これは、北海道や新潟県の米の生産量を上回っています。
笠井 おせんべいやあられの表示を見ると、そのほとんどが外米ですね。また、それが主食に混ざっているのも問題です。外米は、汚染米事件など、食の安全上も不安があります。こんなときこそ24年間続けてきた産直運動の出番ですね。
白石 価格と流通が不安定ななか、安全な農産物を届けるうえで、産直運動の果たす役割が非常に大事になっています。ガット・ウルグアイラウンド合意で米の輸入自由化を許すかどうかが緊迫していた1993年は大冷害で、米パニックの年でした。米を守る運動が大きく前進したその年に、米の産直運動が始まりました。
笠井 店頭から国産米がなくなり、米パニックという事態に、「たった一度の凶作で米不足なんて許せない」と政府の責任を明らかにした「日本の米を守る新婦人5カ条」をつくってポスターにしたり、銀座デモもして世界中にテレビで放映されました。
新婦人の応援でやめない農家も
白石 生産者と消費者が直接結びつき、いろんなことを乗り越えて一緒に運動できるのが産直運動ですね。農民連が10月に開いた全国会議で、いままで農民連と距離を置いていた人が、米価暴落のなか、新婦人との産直運動に注目し、「ぜひ参加したい。仲間に入れてほしい」と申し出てきたという発言がありました。また、ある県の会長は「新婦人の応援がなければ、米作りはとっくにやめていた」という会員の声を紹介していました。
笠井 米価暴落の今こそ、「食べて農業を守れ、主食を守れ」の取り組みが短期間に広がっているのは顔がみえる交流と運動の蓄積があるからこそですね。東京では、「戦争をさせ米(まい)、行かせ米(まい)」と新米を食べながら、班で、戦争する国づくりを許さない運動とあわせて、産直運動への参加を増やそうと呼びかけたら、今これが広がっています。「もうやめる」と言っていた農業青年がこの取り組みを聞いて、涙ながらに「やっぱり続ける」と決意してくれたという話にも感激して「産直米を食べて生産者を支えよう」と運動が進められています。
|
「米作りを守れ!」とこぶしを振り上げる笠井会長(右から2人目)と白石会長(その左) |
持続可能な地域づくりを
白石 「国産の安全な米を食べたい」という消費者のみなさんの願い、「支えてくれる人たちに安心・安全な国産米を届ける」という生産者の思い、これが産直運動の原点ですね。
笠井 私たちは、「新婦人と農民連が応援する産直運動 あらたな共同目標(案)」を先の中央委員会で話し合い、その目標の中で、持続可能な循環型の地域社会をめざすことを掲げました。家族農業を守り、雇用や子育て、老後を守る地域づくり、再生可能エネルギーの普及などを共同して、挑戦していきたいと思います。
白石 今年は国際家族農業年です。小規模・家族農業こそが温暖化を防止し、生物多様性を守り、飢餓を克服する力になります。みなさんと一緒に産直運動を軸に学習と交流を深めながら持続可能な地域作りの運動を強めたいと考えています。
笠井 地域から希望を開くためにも、主食を守る農政への転換を求めて、産直運動と農業を守る運動をいっそう進めていきたいと思います。
白石 ともにがんばりましょう。
(新聞「農民」2014.11.3付)
|