水より安い生産者米価
“安部首相!国産の米なくすつもりか”
大問題となっている米価の大暴落。農協の概算金は前年を1俵(60キロ)3000円前後も下回り、コシヒカリで1俵9000円、その他の銘柄では8000円台〜7000円台の価格も続出し、2013年産の下落と合わせると2年間で5000円を超える下落です。
生産費の半分、物財費にも届かない米価
米を作るのにどれほどコストがかかるのでしょうか? 農水省の調査では全算入生産費は1俵1万6236円(農水省調査過去5年、全国平均)。種もみや肥料、燃料費などの物財費だけでも9666円(同)かかります。農家は生産費の半値、物財費を割り込む価格で米を出荷することになるのです。低米価に加えて、政府は今年から米の直接支払交付金を10アール1万5000円から7500円に半減させ、米価下落補てん給付金も事実上廃止しました。しかも天候不順による収量減や品質低下による等級落ちで収入はさらに下がるのです。農民は四重、五重の苦難に直面しています。
農家、中でも規模拡大してきた農家ほど打撃は深刻で、まさに日本の米と農業の“非常事態”です。
ミネラルウオーターの半値で米を出荷
米価がどれほど安いのか市販の水(ミネラルウオーター)と比べてみました。ペットボトル500ミリリットルは自販機で110〜120円で売られていますが、これを超える米の概算金が見当たりません。ペットボトルに入る米の量は403グラム。これを概算金に当てはめると9000円の米は60円、8000円の米は54円、7000円の米は47円。西川農水相の出身地、栃木県のあさひの夢はたったの44円。日本一高いとされる新潟魚沼のコシヒカリでさえも95円にすぎず、市場に流通する全国どの銘柄をとっても100円を超えるものはありません。
大量の水を使い、種まき、田植え、施肥、草取りなど半年もかけて収穫する米が、水より安いのです。こんなことが許されるのでしょうか。
“何が地方創生だ”“国産の米がなくなってもいいのか”。農民の怒りの声が聞こえてきます。
消費者はこんな価格を求めていない
量販店などは5キロ1300〜1400円台で安売りを競っていますが、1キロあたりの価格はほとんどが300円以下です。これをお茶わん1杯のご飯にすれば20円以下。国民の命をつなぐ米をこれほど粗末に扱っていいのでしょうか。心ある消費者からは「こんな価格で作り手がいなくなったらどうするのか」「価格は再生産を前提に決めるべきでは…」「政府は輸入米を念頭に置いて米価を下げているのではないのか」などと懸念の声を上げています。
米価の下落は、地域の経済にも大きな影響を与えます。農民への低米価の押しつけは、労働者に対する生涯非正規などの攻撃と同じで、格差と貧困の拡大をもたらす社会的な大問題です。
何よりもこんな農政のもとで日本の米や農業、そして国民の食料が守れるわけがありません。
農家が再生産できる価格が保証され、消費者がいつまでも国産米を食べ続けられる。そんな農政の抜本的な転換へ、国民が力を合わせることが今ほど求められているときはありません。
(新聞「農民」2014.10.27付)
|