TPP許さない共同さらに広く
中央・地方の経験報告
全国交流集会
海外からもメッセージ
TPP交渉が「11月合意」をもくろむオバマ米大統領のねらいを受けて続けられる一方で、合意を許さない運動も中央や地方で取り組まれています。「各地の経験に学びたい」「これからの運動をどう進めるか」の声に応えて、「TPPをめぐる運動のこれからを考える全国交流集会」が9月27日、東京・御茶ノ水で開かれ、全国から250人を超える人々が集い、交流しました。
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250人を超える参加者が集まった全国交流集会 |
主催は、「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の醍醐聰・東京大学名誉教授、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」の中野和子弁護士、主婦連合会の山根香織会長が共同代表を務める実行委員会です。
醍醐氏が「TPPの合意阻止をめざして知恵を出し合おう」と開会あいさつを行いました。
海外からのメッセージが、ニュージーランド・オークランド大学のジェーン・ケルシーさん、APFIネットのパトリシア・レナードさん、アメリカ・パブリックシチズンのロリ・ワラックさんから寄せられ、読み上げられました。
自民党のいい分ことごとく破綻
午前中の集会では3氏が報告しました。東京大学大学院の鈴木宜弘教授は、「国民の命や健康、くらしを犠牲にしても、短期的なもうけを優先する、ごく一握りの企業の経営陣と政治資金等で結びついた一部の政治家、“天下り”で結びついた一部の官僚、スポンサー料で結びついた一部のマスコミ、研究資金で結びついた一部の研究者が、国民の大多数を欺いて、TPPやそれと表裏一体の規制改革、農業・農協改革を推進しようとしている」と批判しました。
自民党は、「聖域」の中身を後退させつつ「聖域は守る」と言い続け、ほかの「守るべき国益」も、軽自動車の税金引き上げ、がん保険市場の明け渡し、自由診療の拡大、アメリカ産牛肉の輸入条件の緩和など、「ことごとく破たんしている」と告発しました。
さらにアメリカは、実質的な輸出補助金で自国の乳製品や穀物を不当に安くして輸出を伸ばしているのに、輸出補助金は野放しのまま、日本に関税の全廃を迫り続けています。また、他国には、アメリカ製品に対する差別があれば、命や環境を守る基準でも、社会のセーフティーネットでもアメリカ企業の利益を損ねたとして、損害をISDS(投資家対国家の紛争解決)条項で賠償させるという脅しの手口を明らかにしました。
最後に、鈴木教授は「われわれは、自己の目先の利益だけでなく、地域の全体の将来とそこに暮らす人々の発展を考え、地域の産業と生活を守る使命がある。TPPの流れに飲み込まれず、自分たちの地域の食と暮らしを守り、豊かな地域社会を次世代に引き継ぐために今こそ奮闘しよう」と呼びかけました。
外国の運動と 情報を共有して
アジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子さんが「TPP交渉はじめ通商交渉の現局面と国際的な対抗運動」について報告。アメリカ国内では、オバマ大統領がTPA(貿易促進権限)をもてず、国内の反対派が多いこと、秘密交渉、議会軽視への不満が大きく、特に、牛肉・豚肉・乳製品などの輸出業界は徹底して日本に「関税ゼロ」を迫り、推進派からの圧力も強まっていることを指摘しました。
アメリカの貿易戦略の中心は、TPPのほかにTTIP(アメリカEU貿易・投資連携協定)、TiSA(新サービス協定)であることを述べ、TPPに反対する各国の運動を紹介しながら、「情報を共有しながら国内での運動も強めよう」と訴えました。
岩手県農協中央会の畠山房郎常務理事は、「TPP等と食料・農林水産業・地域経済を考える岩手県民会議の実践」を紹介。同県民会議は、TPPをはじめとする新たな貿易ルールから県の農林水産業や地域経済・社会を守るために2011年1月31日に設立され、現在まで参加団体は、経済・医療・消費者・労働・生産者団体など52団体にのぼります。
節々で、県民フォーラムや総決起集会、街頭PR活動のほか、「韓米FTA」状況調査団を派遣したことを披露し、「今後とも県民各層との連携のもと総力をあげて反対運動に取り組んでいきます」と表明しました。
4分科会で熱心に討論
午後は4つの分科会で熱心に討論しました。その後の全体会で、分科会の報告が行われました。(分科会の内容は後日掲載します)
最後に、中野弁護士が「一致点で共同して地域を守り、情報を交流しながら、これからの反対運動をつくっていきましょう」と呼びかけました。
(新聞「農民」2014.10.20付)
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