西川氏は“農業破壊”大臣
関連/過剰米で県独自対策を
日豪EPA合意・TPP推進など“実績”買われ
TPP早期妥結の先陣に
安倍首相は9月19日、内外情勢調査会での講演で、西川公也新農相を天まで持ち上げました。いわく、「西川氏を農水大臣に据えたところに、TPP早期妥結に向けた私の決意のほどを」見てほしい――。「今までの全中(全国農協中央会)の在り方は廃止し、60年ぶりの農協改革を断行する。40年以上続いた減反政策も廃止する。自民党の農林族と言えば、既得権益の代表のように思われてきたが、日本の農業の未来を考えれば、この道しかない。『真の農林族』である西川大臣の活躍に大いに期待している」。
安倍首相が語っているのは、新農水大臣に“農業破壊”大臣に徹してほしいという期待と注文です。西川氏も大臣の椅子欲しさに、この期待に応えるのに十分な実績を積んできました。マスコミ報道や当事者の発言がそれを裏付けています。
族をもって族を制す
安倍首相が西川氏を自民党TPP対策委員長に据えたのは、TPP参加を表明した2013年2月の日米首脳会談直後。「西川氏は農水族だが、首相が『族をもって族を制す』とTPP対策委員長に起用し、交渉参加に向けた自民党内の調整を託したキーマン」としてでした(毎日新聞、13年10月9日)。
その後、西川氏は米、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物の関税は撤廃しないという公約と国会決議を踏みにじり、関税引き下げや輸入枠の拡大の検討など、「聖域」の突き崩しの検討に踏み込みます。
際立っていたのは、安倍首相が初参加した13年10月のTPP首脳会合が開かれたインドネシア・バリ島で、記者団に「関税撤廃できるかどうか検討する」と語り、「聖域5項目」の586品目のうち、切り売り可能なものの仕分けを宣言し、関税の部分撤廃容認の流れを作ったこと。しかも、西川発言は安倍首相のシナリオにもとづくものでした。
TPP「完全降伏」への第一歩である日豪EPA(経済連携協定)合意を主導したのも、閣僚でもないのに豪貿易相と二度にわたって「交渉」した西川氏でした。本人は「おれは日豪の『愛のキューピッド』だ」(読売新聞、5月4日)と吹聴しているといいます。
安倍首相は「西川さんに頼んだら、何でもまとめてくれる」と漏らしているそうですが(読売、同前)、西川氏は安倍首相にとってのキューピッドというところでしょう。
大臣の椅子欲しさに
「もともとガチガチの『農林族』議員だった」西川氏の“変節”に対し「党内には『夏の内閣改造で、入閣狙いの猟官運動ではないか』との見方も広がる」(読売、同前)と報じられていました。同氏の変節は今に始まったことではありません。
朝日新聞(3月6日)は「西川は2005年に内閣府副大臣として竹中平蔵・郵政民営化相を支えた。『郵政民営化に反対だった』と語る西川だが、副大臣に指名されると主張を豹変(ひょうへん)させた。それを、当時幹事長代理の安倍は間近で見ていた。西川を可愛がった農林族の先輩、谷津(元農相)は『彼は〔大臣病〕にかかっている。それを政権に利用されるんじゃないか』……自民党では、当選5回以上が大臣の適齢期。西川は当選5回、71歳。TPPの成功こそ自分の生きる道。(選挙で『TPP反対』を訴えた)信条など吹き飛ぶ」と評しています。
また、農協改革議論では積極的に改革を進める立場で、首相官邸と党農林幹部の調整役を務めた西川氏を「農政改革にも貢献したと首相は評価している」(毎日新聞、8月30日)ことは明らかです。だからこそ安倍首相は「真の農林族」と持ち上げたのです。
大臣になってからの言動も国会決議違反は明白
宿願の大臣の椅子に座った西川氏は、TPPによって日本経済が潤うというアメリカの研究所の試算を鵜呑(うの)みにし「経済効果があるなら、妥結は早いほうがいい」と言う一方で、いちおう口先では「TPPについての国会決議は守る」と言っています。
西川農相は「10日夜のテレビ番組で、農産物の重要品目の一部についても、一定の関税削減とセーフガードなどで対応する考えを明言した」といいます(日本農業新聞、9月12日)。
しかし国会決議が要求しているのは「重要品目については除外又は再協議の対象とすること。10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと」です。「一定の関税削減とセーフガードで対応する」という西川農相の発言は、明白な国会決議違反です。
こわもて、辣腕、強引
西川氏は自民党TPP対策委員長当時、自民党の66歳の議員を「何を言っているんだ、この小僧!」とどなりあげたり、山形県農協政治連盟がTPP交渉参加反対を掲げる候補の推薦を決めたことに対し「いま自民党を敵にして農業が大丈夫だと思っているのか」と脅したりという常軌を逸した言動で知られています。
また、日豪交渉について西川氏は「通商交渉の経験はなかったが、栃木県議をやっていた時の議長選と似ている。半ば脅したり、懐柔したりして動かしていくんだ」(読売、同前)と吹聴しています。
内政でも外交でも、こんなこわもての脅しと懐柔が通用するはずがありません。打倒すべき最悪の内閣に加わった最悪の大臣であることを肝に銘じ、米価暴落対策の速やかな実施、TPP拒否、農業改革の中止を求める運動にたちあがる時です。
過剰米で県独自対策を
岩手県農民連 県に緊急要請
岩手県農民連は9月25日、岩手県に対して政府による緊急の過剰米処理を求める要請を行いました(写真)。岩手県農民連の久保田彰孝会長らは「規模を拡大してがんばってきた仲間が、特に大打撃を受ける。過剰米対策を中心に政府が早急に対応するよう求めることと、県としても独自の対策をとること」と要請しました。
対応した農林水産部長らは、「北海道東北地方知事会が9月19日に行った政府要望の内容をふまえ、引き続き政府に対しても要請をしていく」と回答。無利子の「米価下落緊急対策資金」も県単独で実施すると述べました。
(岩手県農民連 岡田現三)
(新聞「農民」2014.10.13付)
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