「農民」記事データベース20141006-1136-01

米価暴落が担い手を直撃

群馬 深まる稲作農家の苦悩

 今年から経営所得安定対策が半減され、米価変動補てん交付金が廃止されたもとで、40数年前の水準に暴落した米価。稲作農家と農村地域に深刻な影をもたらしています。
 9月18日、農民連が呼びかけた「米つくって飯くえねえ 中央行動」で、群馬農民連の木村一彦会長が「米価暴落で将来の見通しが立たず、仲間が自ら命を絶っている」と告発。農水省に対策を迫りました。
 政権交代前の自民党政権の「品目横断的経営安定対策」を契機に農地集積による大規模化が進められてきた高崎市。異常な低米価が何をもたらしているのか訪ねました。


生産費を割り込む米価では
将来の見通しまったく立たず

 売り上げ2割減赤字の見込み

 紋谷巌さん(60)は、高崎市の個人経営では最大規模の稲作農家。約28ヘクタールで主食米や飼料米、大豆、麦を栽培しています。民主党政権の戸別所得補償制度を機にサラリーマンをやめて就農した息子さんが2月、亡くなりました。息子さんは米価下落を心配し、戸別所得補償の半減に不安を募らせていたといいます。

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「まるで先の見えない我慢くらべだ」と語る紋谷さん

 紋谷さんは「消費税増税や資材の値上げで経費が増えているのに米価暴落で売り上げは2割も減って赤字になる見込み」「貯金を取り崩すしかないが、貯金がなくなればやめるしかない。このままの米価ではうちも持って3年。やめる農家が大勢出て大変なことになる」と話します。

“自ら命を絶った仲間は、
国に殺されたようなもの”

 仲間が亡くなり非常にショック

画像  江原功さん(71)は500人の農家で構成する「農事組合法人たかさき」の代表理事です。江原さんと同じ地域で、大規模個人経営でがんばっていた仲間が、8月に自ら命を絶ちました。

 江原さんは、「仲間が亡くなりショックです。米価暴落は死活問題。一生懸命作った米の価格が生産費を割り込むようではやっていけない」「価格を下支えする政策が必要だ。このままでは農業をする人がいなくなってしまう」と悲痛な声を上げます。

 組合法人の維持困難になって…

画像  18歳の時に牛を飼い始めて58年になる繁殖和牛農家の平井孝明さん(76)=農事組合法人たかさき理事=は、5ヘクタールの稲作との複合経営です。「この価格では米、麦の収入は全く当てにできない。機械代を払えばなくなってしまう。営農組合を集めて新しく法人化したので、旧組合を解散して残っているお金を、少しでも農家に返そうという動きまで出ている」と、組合の維持が困難になっている窮状を語ります。「これでは後継者も担い手も、将来の展望が全く持てない」と告発します。

 米価下落対策の運動さらに強化

 今回のルポで明らかになったのは、米価大暴落が、政府が育成の対象としてきた大規模経営や法人経営にはかり知れない打撃をもたらしていること。彼らは借地で経営規模を拡大してきた地域農業の担い手です。この層の経営崩壊は、地域農業だけでなく農山村全体に及びかねません。

 こうした事態は政府の失政の結果です。にもかかわらず、「価格は市場で決まるもの」と対策を取ろうとしない政府に農家の怒りはピークに達しています。

 案内してくれた木村会長は「亡くなった2人は国に殺されたようなもの」と語り、「委託作業の見直しなどで何とか農業を続けられるよう手を打つとともに、市に運転資金融資の利息補助を要求するなど運動も強めたい。政府に一刻も早い下落対策を要求する運動を広げたい」と話していました。

(新聞「農民」2014.10.6付)
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2014年10月

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