「農民」記事データベース20140922-1134-07

築地市場移転問題はいま
(下)

農民連常任委員 齋藤敏之


汚染の減額を考慮せず
通常価格の購入は不当

 現在、最大規模の「汚染区域」の土地(東京・豊洲の東京ガス跡地)を、東京ガスが土壌汚染対策を完了したことを前提に、築地市場の移転先として、東京都が通常価格で購入したことをめぐって、2つの「公金支出金返還訴訟」が争われています。

 都のうそは早く見抜けたはずだ

 訴えの趣旨は「土壌汚染地の地価は安くなることを知りながら、普通の値段での購入は地方自治法第2条14と、地方財政法第4条に違反する不当支出であり、差額の返還を求める」ものです。

 4月23日の東京高裁の判決は、「住民監査請求権の時効の1年を過ぎている」との理由から、「控訴棄却」が言い渡されました。

 高裁判決は「都のうそは、もっと早く見抜けたはずだ」として、都の行為を不問にした「不当判決」であり、最高裁に上告しました。

 同時に判決は、東京都議会での石原慎太郎知事らの答弁に、虚偽があったことを認め「答弁内容の適否が、一般的には、それ自体石原らや東京都の政治的責任が問われるべき問題である」と「政治責任」に言及しています。

 この判決が虚偽答弁としたのは、新たに見つかった汚染対策費を、東京ガスが負担するか、都が負担するかについての、2008年6月、09年2月の都議会答弁です。

 最高裁への上告では、この答弁の評価を、争点の一つにしました。

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「築地市場の豊洲移転に異議あり」と都内をデモ行進=3月29日

 都の土地購入判断が問われる

 東京地裁で争われている築地市場移転問題をめぐる「公金支出金返還訴訟」は、2011年3月に支出した分で、時効前に提訴しました。

 争点となっている契約は、11年3月11日の東日本大震災で、移転用地の液状化が明らかになり、「土壌汚染がさらに深刻化するのではないか」と心配されていたにもかかわらず、3月20日、31日、4月5日に、1平方メートルあたり約53万円、総額588億1427万8000円で購入したものです。

 この土地の購価格について、東京都財政価格審議会では、11年3月10日、汚染の処理費用は「考慮外」としました。関係者は、これを不服とし、12年3月2日、都に監査請求を行いました。

 この請求に対して、東京都監査委員会は、12年4月27日、「本件各土地の取得価格について、別途、都と東京ガス等との協議に委ねる」とし、「土壌汚染を考慮外とした評価額で現所有者から取得した一連の行為が違法不当であるとは言えない」との判断を下しました。

 この監査委員会の判断でも明らかなように、「汚染対策費は、当事者間で協議するのだから、購入価格は、土壌汚染を考慮しない通常の取引価格で行う」というものです。いくらかかるかわからない「汚染対策費」を除外した判断は、一般の不動産取引で成り立つわけがありません。

 東京地裁で争われている裁判は、いや応なしに、こうした都の姿勢が問われます。

 「都の答弁」に注目の地裁判断

 時効後の提訴だと門前払いした東京高裁判決が認めた「都の虚偽答弁」をめぐる、地裁の判断も注目されます。

 1935年に開場した築地市場の整備は、必要です。だから、91年から現在地再整備に向けて、様々な工事が始まりました。ところが、現在地再整備に難色を示した石原知事の鶴の一声で2001年、突如、東京・豊洲の東京ガス工場跡地への移転が決まりました。「現在地再整備には、お金も、時間もかかる、だから豊洲移転だ」というものです。

 現在進められている移転計画は、市場関係者にそっぽを向かれ、さらに土壌汚染対策費のめども立たない計画です。

 こんな計画はやめて、現在地再整備で、東京駅から歩いて30分圏内に世界ブランド「築地」を残すことは、日本の「食文化」を世界に発信することです。それは、日本の市場制度を守ることにもなります。

(おわり)

(新聞「農民」2014.9.22付)
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2014年9月

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