本の紹介
太田原高昭著
農協の大義
規制改革会議「意見」を批判
農協の役割を力強く描く
今年5月に政府の規制改革会議が発表した「農業改革に関する意見」は、農協に対して中央会制度の廃止、信用・共済事業の分離などを要求する激烈な攻撃の文書でした。本書は、本紙6月30日付の大型インタビューにも登場した太田原高昭さん(北海道大学名誉教授・農協論)が、「意見」の無知・無責任を怒りをもって指弾しつつ、農協が日本の農業・農村で果たしている、また果たしてきた積極的な役割を力強く描き出した一冊です。
太田原さんによれば、そもそも協同組合は「大が小を駆逐する資本主義の法則に抵抗して、小の経済を結束して大きな経済を創り出し、市場において大資本と対等に競争するための組織体」であり、経済民主主義の大切な一要素です。「意見」が農協に対して乱暴な攻撃を加えるのは、「小さな経済は市場から退場すればよいと考え、それが集まって大企業と対抗することなど想定していない彼らの経済学の欠陥」の表れだと批判します。
もちろん、批判は理念の問題にとどまるものではありません。戦後日本の農協が集落を基礎に「総合農協」という独自の組織形態を生み出し、農業生産力の飛躍的な発展に貢献してきたことを、茨城県・玉川農協や岩手県・志和農協などの実践を含めて具体的に示し、規模の大小にかかわらず農民が協力団結することこそ農業の発展の道であることを説得的に論じます。
本書はまた、食料危機の脅威にさらされているアジア・アフリカ地域の国々に対して日本の小規模家族農業とそれを支える総合農協が持続的発展のモデルを提供し、国際的に高く評価されていることも明らかにします。
農協は、農家だけでなく、食の安全・安心を願うすべての人々にとって貴重な財産です。消費者・国民と広く結んで筋違いの攻撃をはね返し、さらに期待に応える組織へと発展することが、切実に求められています。
▼A5判、100ページ
▼定価 800円+税
▼農山漁村文化協会(農文協)刊 TEL 03(3585)1141
(新聞「農民」2014.9.15付)
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