「農民」記事データベース20140915-1133-11

築地市場移転問題はいま
(上)

農民連常任委員 齋藤敏之


物流動線や経費増大から
賛成業者内にも不安続出

 市場の命となる物流が非効率に

 「守ろうー築地市場パレード実行委員会」は8月26日、東京・築地市場内で、都中央卸売市場新市場整備部の北島隆管理課長らとの交渉を行いました。

 初めに、今年2月21日に開かれた新市場建設協議会で、移転に賛成する都水産物卸売業者協会会長の伊藤裕康さんが、新市場の設計や物流計画に対して具体的に40分間にわたって指摘した問題に対して、北島課長は、「業者と協議し効率的にできるよう検討している」と、伊藤会長の具体的な指摘にはまったく触れない回答を行いました。

 市場の命ともいう「物流動線」は、築地市場では、扇形の外側に青果と水産の卸売場、その奥に仲卸の店舗が配置されています。また、扇の要に、荷捌(さば)き場や駐車場を配置する効率的動線になっています。

 ところが、移転先の東京・豊洲新市場の設計は、青果卸売場と青果仲卸店舗、水産卸売場、水産仲卸店舗が大きな道路で3カ所に分断されているうえ、各建物とも閉鎖型の重層構造のため、上下移動がエレベーター主流で、市場の物流をになうターレットが走りまわれないなど、問題点があります。物流動線の分断と、上下動のための物流経費の増大など、移転に賛成する業者のみなさんからの不安に応える回答は、最後までありませんでした。

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豊洲新市場の完成予想図。水産仲卸(左側)と水産卸(右側)、青果仲卸(奥)が分断されている

 あいまいな回答くりかえす都側

 土壌汚染問題でも、担当者は法律に則って粛々と工事を進めているとの回答を繰り返しました。

 築地市場から豊洲に移転する用地は、東京ガス(株)が1956年から約30年間、石炭からガスを製造する工場とし使っていたところです。そこに、製造過程で出た汚染物質をそのまま埋めたため、現在でも環境省から、土壌汚染対策法に基づく最大規模の「汚染区域」と指定されています。

 地下水まで広範囲に汚染されている土地の「汚染区域」の指定解除には、土壌汚染対策終了後2年間の地下水モニタリング調査の実施が義務づけられています。

 参加者から、本体工事を進めながら「地下水のモニタリング調査を行うと言うが、基礎工事や売り場の工事が進んでから、汚染が見つかったらどのように除去するのか」との質問に、都側はわけのわからない回答を繰り返しました。

 参加者から「せめて2年間のモニタリング調査を終え『安全宣言』を行ってから、本体工事を始めればいいではないか」との指摘にも、都側は、あいまいな回答を繰り返しました。

(つづく)

(新聞「農民」2014.9.15付)
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2014年9月

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