たたかいが政府を
揺り動かしてきた
農民連事務局長 笹渡義夫
世論に押されて市場へ介入
米価暴落対策について農水省は、「今は米は民間で値決めされる時代」「価格に影響を与える対策は行わない」として拒否し続けています。
市場に丸投げして、“あとは野となれ山となれ”というのが新自由主義の美徳と言わんばかりの無責任な態度です。
しかし、その新自由主義的な政府であっても、国民世論に押されて市場への介入をたびたび行ってきているのです。
その最たるものは、2008年の春闘の最中の3月6日、当時の福田康夫首相は首相官邸に御手洗冨士夫日本経団連会長を呼んで、異例の賃上げ要請を行ったことです。
安倍首相も13年2月2日、経済3団体(日本経団連、経済同友会、日本商工会議所)トップに、デフレ脱却に向けて業績が改善した企業から賃金を引き上げるよう強く要請しています。
賃金を決める“市場”は、労使交渉なのであって、これに政府や行政が介入することは異例中の異例でした。
農業関連では、08年の穀物相場の暴騰による飼料価格の値上がりが畜産農家を直撃した際、乳業メーカーや大手量販店の抵抗を押し返して不十分ながらも09年3月から乳価10円の引き上げが行われました。
乳価を決めるシステムは、生産者側の指定団体と乳業メーカーの交渉であり、これがいわば“市場”の役割を果たしています。このときに農水省が、乳価引き上げを要求する生産者側に押されてとった措置は、生産者、メーカー、小売りの代表者による協議会を設置。渋るメーカーと小売りに飼料価格の高騰による生産者側のコスト上昇分を価格で吸収するよう強く働きかけたのです。
米では、09年産の米価が大暴落し、JA全農が「概算金7000円」を打ち出して農民を驚がくさせた翌年、政府はあわせて34万トンの備蓄米の追加買い入れを行って米価下落に歯止めをかけ、JAも概算金を上乗せしました。
こうしたいずれのケースも、世論と運動が政府を突き動かしたものでした。賃金では労働組合を先頭にした国民的なたたかいがあり、農業では、「水より安い牛乳でいいのか」「米を作って飯くえねえ」など、その時々の農民連の草の根からの奮闘が情勢を動かした結果でした。
追い詰められているのは安倍内閣
国民の主食である米を1万6000円の生産費(60キロあたり)を投入し、その半額で米を売るという異常事態が放置されていいのか。政府の責任が鋭く問われています。
選挙目当ての“目くらまし”とはいえ、「10年後の農業・農村所得倍増」政策を掲げ、「アベノミクス」のもとで疲弊する地方に対して、いっせい地方選挙対策として「地方創生」を掲げざるをえない安倍内閣。
これまでの成果を確信に、米価暴落対策で再び世論と運動を燃え広げ、安倍内閣を突き動かすたたかいが求められています。
(新聞「農民」2014.9.15付)
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