「農民」記事データベース20140908-1132-02

養父(やぶ)市の
「国家戦略特区」指定に危惧

兵庫県農民連会長 永井 修

関連/広島豪雨災害支援募金のよびかけ


農業委の権限取り上げ
農地を参入企業などに

 安倍政権が進めるアベノミクス「成長戦略」の一つ、「企業が世界で一番活躍しやすい国づくり」に向けて、「国家戦略特区」に兵庫県養父市が唐突に手をあげて、4月に新潟市とともに「農業特区」に政令によって定められました。

農業委・議会・農民に説明なしに「特区」申請

 今年の2月、農業委員会の権限を廃止することなどを目的とした「国家戦略特区事業提案」の最終ヒアリングが開かれ、広瀬栄・養父市長と有限会社新鮮組(愛知県田原市)の岡本重明代表取締役と学者という異例の組み合わせでした。

 農業委員会から農地法3条に規定される所有権移転などの権限を取り上げ、市に移管するという「特区」の申請は、農業委員会も議会も市民・農民にも何の説明もなく進められ、養父市農業委員会は、抗議の意見書を発表しました。

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「特区」問題を考える学習会で講演する橋本正一さん(日本共産党農林漁民局)=7月27日

 知事の圧力もあって

 菅義偉官房長官、兵庫県知事の圧力によって、6月の市農業委員会の臨時総会で、これまでの「断固反対」の態度を急転換し、農地法3条に関わる農業委員会の権限を市に移管することを全会一致ではなく、多数決で決定しました。

 農地法は「地域における最も重要な資源である農地は、耕作者自らによる所有であることが重要とし、その農地の管理、利用調整を農民の代表である農業委員会に委ねることが耕作者の地位安定と国内農業生産の増大、食糧自給に資する」ことをうたっています。

 危険な理念に立って

 今回の特区問題は、この農地法を「特区」という乱暴な手段で破ろうとするものです。

 養父市長は「新鮮組とパートナーを組んで、市の農業振興をめざしている」としていますが、新選組の岡本代表取締役は、「農業に株式会社の参入が規制されている。これを変えることが必要だ。日本の農業の諸悪の根源は農協だ。地方では農協と行政が一体であり、こうした農業団体とセクションはすべて敵である」という危険な理念に立っています。

 議会では「この会社と市がパートナーを組むことになる。岡本氏の理念と同一歩調を市が持つことになる。会社組織はあくまで利益を追求する。奥地で点在している耕作放棄地を、自らの利益を棚上げしてまで守ることはしない」と強く批判されています。

 県は、安倍政権の「農政改革」の中心となっている「農地中間管理機構」設置に全国の先頭を切って予算化し、農業の大規模化と「構造改革」に取り組むとしています。

 4月には農地の借り受け希望者を募集し、大規模農家や農業参入企業などの希望を受けています。また、農業経営高度化の大規模な施設設置の計画ももっています。

農業・農民経営を破壊し農村の荒廃を一層促進

 県の北播地方では、酒米の山田錦を大幅に増産する計画を進め、減反の制約を取り払い、今年度は120%に増やし、高級日本酒として、神戸ビーフや和食ブームとあわせて農産物の輸出促進を図ろうとしています。

 数年前まで、高級酒の消費の落ち込みで酒米の在庫が問題となりましたが、増産の呼びかけでそれまでのコシヒカリから値のよい山田錦に切り替える農家も生まれています。輸出頼みの振興策がどう成り立つのか疑問です。

 養父市も含め、兵庫県下の中山間地の農業は、高齢化・後継者問題、農産物価格、鳥獣害、耕作放棄地対策など大きな困難に直面しています。

 安倍政権による「戦後農政の総決算」が、これまでの農業の枠組みを解体し、農業と農民経営に更なる困難を持ち込み、農村の荒廃を一挙に進めることはまちがいありません。

 農村の地域社会を守ってきたのは農民です。一次産業こそ日本の国土を守っています。この自覚をもって農業を守り、地域社会を支える農民連の組織をつくり上げることが急務であると改めて決意しています。


広島豪雨災害支援募金のよびかけ
 8月中旬から下旬にかけて記録的な豪雨が襲い、土砂災害などで70人以上の死者・行方不明者がでた広島市。収穫を間近に控えた農作物にも影響がでています。農民連災害対策本部は、支援募金を呼びかけます。

 振込先  ゆうちょ銀行
 口座名  農民連災害対策本部
 記号   10030
 番号   61671711
 他行からの送金の場合
 店名   〇〇八(ゼロゼロハチ)
 店番   008
 預金種目 普通預金
 口座番号 6167171

(新聞「農民」2014.9.8付)
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2014年9月

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