新米価格
前年産と下げ競う異常事態
“親不孝相場”が米業者を直撃
新米が前年産の価格を下回る異常事態を米業界は“親不孝相場”と呼んでいます。いま、この“親不孝相場”が生産者だけでなく米業者をも直撃しています。すでに昨年(2013年)産の米価暴落で大きな打撃を受けた上に、今年(2014年)産新米の価格がさらに下回る展開で、米屋さんから「とても商売が成り立たない」と悲鳴の声が上がっています。在庫を持つ、卸業者も1俵(60キロ)2000〜3000円もの差損が生まれる状況で経営に重大な影響が及ぼうとしています。
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前年産を下回る価格で販売を始めた関西のスーパーのチラシ(各社とも8月第2週分) |
農家を気づかいながらも値を下げて
米価の下落は業界関係者のあいだでは、ある程度予測されていました。しかし、下落は予測をはるかに超える激しさで迫っています。
昨年産の業者間の取引価格は秋に比べて3000円前後も下落しているところに、今年産の新米が更にそれを下回る価格で取引が始まろうとしているのです。このため昨年産は更にその下を行く価格になるという、新米と昨年産が“下げ競う”最悪の事態になっているのです。
「安い米を手にした業者が得意先にとんでもない安値で攻めてくる。損をしてでも下げざるをえない」「新米のコシ1590円(5キロ)などとチラシをバンバン撃たれるとこたえる」「こんな価格で農家がやっていけるのかと思いながらも、市場には合わせざるをえない」と米屋さんも苦しい胸の内を語ります。また、ある卸業者は「5%程度の利益でやっているのに、今回の差損は20%を超える」とその異常ぶりを語り、「撤退する卸も少なくないのでは」と危機感を募らせます。
米価暴落で得する人はいるのか
米価が暴落して得をする人がいるのでしょうか?
大半の米業者は打撃を受ける被害者です。価格の下落はそのまま利益の減少につながり、さらに流通の激変で「お客が他に流れたり、奪われたり」などの事態に、街の米屋さんも商売を続けられるかどうかの瀬戸際に立たされています。長年、主食の米を通して地域に貢献する米屋さんが、「撤退」ともなれば、地域社会そのものの崩壊にもつながりかねません。
消費者にとっても一時的に米価が下がっても、国産米の作り手がいなくなり、食料自給率が下がったのでは元も子もありません。
結局、一部の大手企業が米流通を支配し、農業参入や農地取得に道を開くことになるだけです。
政府の無責任が事態を悪化させ
この間、政府は今年の6月末在庫が2年前に比べて75万トンも増えると予測しながら、何らの対策も取りませんでした。民間レベルで35万トンを市場から隔離する対策が取られますが、規模が小さいため「大勢に影響なし」とされています。何よりも「市場に影響を与える需給調整はしない。価格は市場に任せる」とする政府の無責任な姿勢に、市場は「需給の締まる目はなくなった。先安の流れは変わらない」と判断し、過剰感と米価下落の流れをさらに増幅させているのです。
2018年から国が生産目標数量の配分をやめて、米生産からも完全に手を引こうとしていますが、この流れを放置すれば、需給と価格の混乱は更に激しいものになるのは必至です。
米政策の転換へ共同を広げて
農民連はこの秋、“米作って飯くえねえ”と政府に対して、「米の需給と価格の安定に責任を果たせ」などの要求を掲げて運動を展開します。
この間、農民連は米業者と生産者をつなぐ取り組みを進めてきましたが、こういう時こそお互いに理解を深め、米政策の転換とあわせて、流通面でもより太いパイプへと共同を広げることが求められています。
(新聞「農民」2014.8.25付)
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