「農民」記事データベース20140728-1127-14

シリーズ
食品表示考えるを
[最終回]

主婦連合会 佐野真理子


課題が多い基準案

 消費者庁は7月7日、食品衛生法、JAS法、健康増進法の3法が規定する58基準を統合化する食品基準案を提示し、8月10日までパブリックコメントを募集しています。事業者の実行可能性を重視した内容で、消費者にとって、本当に分かりやすくて正しい表示制度となるのか、疑問です。

 基準案では食品表示法の施行以降、加工食品は2年、添加物は1年、栄養成分表示は5年という長い猶予期間が設定されています。

 最初から議論の対象外だった加工食品の原料原産地表示や、遺伝子組み換え表示、食品添加物表示などの抜本改善についてはいつ検討に着手されるのか、明確ではありません。私たち消費者は、安全の権利、知らされる権利、選択する権利など、消費者の権利を実現する表示制度となるよう求めてきました。その観点から提示された新ルールのポイントをみてみます。

私たちの望むルールを求め、声をあげよう!!

 定義設定など、コンセンサスが得られない課題も山積

 食品表示の新ルール案は消費者委員会の3つの調査会報告に基づき策定されました。しかし、調査会では「製造者」「加工者」などの定義をはじめ、「生鮮」「加工」「異種混合」の取り扱いなど、区分整理などでもコンセンサスが得られなかった課題が多いのが実態です。

 それらを踏まえての消費者庁がまとめた新ルール案は、現行制度からの主な変更点として次の点を提案しています。

 まず、食品衛生法とJAS法で異なっていた食品区分を、JAS法の考え方に基づき区分・整理するというもの。ドライマンゴーなど簡単な加工を施したものは「加工食品」として整理され、アレルゲンなどの表示義務が課せられることになります。

 しかし、その一方で、生鮮品では必須だった「原産地表示」が、加工食品に移行すると同表示が一部品目に限定されるなど、表示の後退が生じることも考えられます。共通ルールとして整備しても添加物表示をはじめ、品目によっては十分検討しなくてはならない課題は多いのです。

 製造所固有記号の見直しも盛り込まれています。消費者庁は、原則として2つ以上の工場で製造する商品のみに記号をつけることを認めようとしています。食品表示を考える市民ネットワークが実施した調査では、製造所固有記号は産地偽装や事業者の都合のよい価格設定の隠れみのに悪用される可能性が高いことなどがわかりました。同記号の廃止と製造所・所在の記載義務化を求めていきます。


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製造者名の横に製造所固有記号「SBUF」が記載されている。住所は本社の所有地

 新ルール案には栄養表示について5成分の義務化も提案されています。この中には、多くの国で表示義務の対象とされるトランス脂肪酸は含まれていません。

 課題の多い食品基準案です。私たちの望む食品表示のルールを求め、みんなで声をあげていきましょう。

(おわり)

(新聞「農民」2014.7.28付)
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2014年7月

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